薬と薬草のお話

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vol.73 ゴボウと牛蒡子(ゴボウシ)

薬用基原植物
Arctium lappa Linné(Compositae)
2022年12月31

 師走はお正月料理の材料探しが慌ただしく始まります。私の住んでいる北摂には地産地消のおせち料理に使った野菜のクワイやゴボウなどがあります。中でも数十年前には手に入った北摂豊能町高山地区の特産品、高山ごぼうの煮物料理のことを思い出します。

 ゴボウは根の方ではなく、夏から秋にアザミのような花の形の先に出来る果実を乾燥させた、黒っぽい、長さ数ミリ~2センチのものを「牛蒡子」と称し生薬として使うことがあります。ゴボウの自生地はヨーロッパからシベリア・中国東北地区あたりの山野だそうですが、現在日本で薬用とする牛蒡子は中国からの輸入品です。この牛蒡子の主要成分の中には、リグナン類のアルクチン、アルクチゲニンなどが含まれ、近年話題の植物エストロゲンのような作用などを想起させる興味深い生薬です。また日本の民間療法にも利用されますが、その効果としては科学的にはまだ十分にわかっていません。

 一方牛蒡子が配剤される漢方薬、特に近年エキス化された処方には、柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)、消風散(しょうふうさん)、銀翹散(ぎんぎょうさん)、金羚感冒錠(きんれいかんぼうじょう)などがあります。

 その中で牛蒡子は熱をさます性質(清熱・解毒)として、例えば銀翹散、金羚感冒錠の処方中では連翹と組み合わせ、風邪症状の始め、のどの痛みに効果的に発揮されます。これから風邪のひき始めの症状がのどに表れる場合、エキスを少しゆっくり口に含んでから服用するとより効果的です。

 昔仕事終わりの夜中の台所での、普段使わない大きなお鍋であく抜きや型取りを亡母に教わりながらの夜なべ仕事は、社会人になってからは、暮れの日々は苦痛に思うことがありました。けれど、野菜売り場のおせち料理材料を見かけると、おめでたいとされる吉祥の型、亀の甲羅に抜くシイタケの切り目、鶴はどうするのなどのやり取りの思い出が遠ざかりそうになるほど、家族の幸せを願うことを教えられていたのだと、その時の母の声が胸の奥で響いています。

 良いお年をお迎えくださることを願います。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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