薬と薬草のお話

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vol.69 ゴシュユと呉茱萸(ごしゅゆ)

薬用基原植物 Euodia officinalis Dode, Euodia bodinieri Dode,
又は
Euodia ruticarpa Hooker filius et Thomson
(Rutaceae)
2022年7月31

  • 呉茱萸

 めまぐるしく時代が移り変わる中で、小さなこと、例えば季節の巡りを「春夏秋冬」と教わったのが、とうの昔のことのように感じることがあります。そんな中、自分の身のまわりで出会う草木(夏なら、朝顔、木槿〈むくげ〉、ノウゼンカズラ、サルスベリ等々)が巡りの順をたがえず咲き誇る姿を見るとほっとします。

 呉茱萸は中国原産とされる植物で、日本では江戸時代中期に各地に広まり、今でも自生または民家付近に栽培されています。常緑で雌雄異株の低木で、初夏に緑白色の小花を咲かせます。9〜10月に果実がなり、冬には落葉します。実際煎じ薬の呉茱萸を手にしてみると、小粒の山椒(さんしょう)にやや似た姿をしていますが、辛味と苦味を思わせる独特の匂いで、口にする気がそがれるような香りです。

 代表的な漢方処方例としては、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、温経湯(うんけいとう)、当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)に配剤されています。この処方は当帰(とうき)、桂皮(けいひ)、芍薬(しゃくやく)、木通(もくつう)、細辛(さいしん)、甘草(かんぞう)、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)、そして呉茱萸の九味の構成で、呉茱萸は胃腸系を温め、痛みを止め、気を調(ととの)えるというような薬味とされています。

 現在エキス化されている製剤は、効能効果として、(最近はあまり聞かない症状ですが)しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛など、猛暑の夏、クーラーの中でおこる手足の冷え、下肢の冷えからくるおなかの痛み等に使うことができます。エキスだと煎じ薬と異なり、服用しにくい呉茱萸特有の苦味・辛味はやや和らいで、服用しやすく感じます。

 職場では年に数回、薬品の棚卸しをします。時にはもう尋ねられることの少ない病の処方、しもやけの漢方用生薬を手にすると、「思い出の棚卸し」のようです。人に心地よい空調の中での仕事三昧の毎日には、ときに先達が残してくれた生薬の使い方が役に立つのかもしれません。大切に残したい先人の知恵の一つです。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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