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薬と薬草のお話vol.68 ショウガと生姜(しょうきょう)と乾姜(かんきょう)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.68 ショウガと生姜(しょうきょう)と乾姜(かんきょう)

薬用基原植物 Zingiber officinale Roscoe
(Zingiberaceae)

 梅雨入りが発表される頃、八百屋さんやスーパーの食品売り場にみずみずしい白い肌と先端に薄紅色を纏(まと)った「新ショウガ」が出始めます。

 新ショウガや茗荷(みょうが)、山椒(さんしょう)などの爽やかな香りの薬味を楽しめる季節が近づいてきたかな。

 ショウガは熱帯アジア原産とされ、日本では天平時代には栽培され始めたともいわれ、食用・薬用ともに要薬の一つに数えられます。現在の日本薬局方ではショウガの根茎、ときに周皮を取り除いたものと定義していて、皮を除いて乾燥したものは生薬名・生姜(しょうきょう)、根茎を湯通し又は蒸したものは乾姜(かんきょう)と原則区別して使い分けます。

 現在、日本で市販されている漢方エキス剤中およそ40%以上の処方に配剤されていて、生姜は辛味性健胃(しんみせいけんい)効果などを期待して、乾姜の方は嘔吐(おうと)、咳(せき)、手足の冷えなどを改善する目的を期待して配剤されます。

 たくさんの漢方製剤、例えば葛根湯、六君子湯(りっくんしとう)、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)などに使われていますが、近年エキス化されたものの一つに、体力が衰弱して疲れやすく、腹部が緊張と冷えのために痛み、汗をかきやすい方に適しているとされる「黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)」があります。この処方は7味の生薬(黄耆、桂皮〈けいひ〉、生姜、芍薬〈しゃくやく〉、甘草〈かんぞう〉、大棗〈たいそう〉、膠飴〈こうい〉)からなり、生姜は桂皮との組み合わせで辛温解表(しんおんげひょう)(身体を温め、発汗させる)目的として配剤されています。これからのジメジメした季節、冷房の中での仕事などで、疲れておなかの調子が悪く寝込んでしまうというような時にも効果があるとされています。

 今は夏暑くなると、冷たいアイスクリームやジュースがほしくなりますが、亡父の時代には、夏の風物詩の一つに、暑気払いとしてあめ湯売りの風景がありました。あめ湯にショウガを加えた薬湯で、夏バテ気味の時期にそれを飲み、生気をとりもどしていたそうです。暑いときには冷たいものだけをとるのではなく、身体の中から温めるという方法も思い出したいですね。


2022年6月29日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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