薬と薬草のお話

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vol.64 センキュウと川芎(せんきゅう)

薬用基原植物 Cnidium officinale Makino (Umbelliferae)
2022年2月28

 暖かくなるといわれるお水取りの日までの春を待つ夜長は、静かな時の流れに包まれ、考え事や謎解きの時間が生まれます。今回の薬草・川芎は、私にとって薬の効き目以外に、つい横道にそれて謎解きしたくなる生薬の一つです。

 これまで紹介してきた草木と違い、川芎は中国原産とされ、日本では自生していないセリ科の植物です。けれど現在では北海道などで栽培され、その栽培品が薬用とされている数少ない多年草の生薬です。

 秋の初め頃、白色の小さな花をつけますが、結実しないので株分けで繁殖させるそうです。現在の薬局方では中国産とは異なる基原植物の根茎を川芎と定義し使用しています。江戸時代に薬用の目的で入ってきたとされていますが、室町時代に売薬として使用されていたとも言われ、いつから作られ、どこで使われていたのかなど謎が多い生薬です。

 薬としての川芎は、主に婦人薬として使う漢方処方に当帰(とうき)とともにたくさん配剤され、例えば当帰芍薬散(しゃくやくさん)、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、川芎茶調散(ちゃちょうさん)など、大変大事な要薬です。

 実際に煎じ用の刻んだ川芎を手にすると、やや当帰に似た独特の強い香りがあり、婦人薬や薬用入浴剤などに共通する芳香を感じます。

 数多い処方のなかでも芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)は川芎・当帰をはじめとして13種の薬味で構成されます。産後の体調不良に使用されますが、それ以外にも主に女性の悩みである冷えや血行不良に応用できる役に立つ処方に思えます。また、この処方に更に8種の生薬を加えた芎帰調血飲第一加減も現在ではエキス化され販売されています。

 アガサ・クリスティーの小説に登場するミス・マープルならお茶を飲みながら薬草に思いを馳(は)せ、謎解きが始まるかも。私も彼女をまねてお茶を頂くと謎解きがすすむでしょうか? いや、夜更かしはやめて、明日の仕事に備えます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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