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薬と薬草のお話vol.54 アカヤジオウと地黄(じおう)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.54 アカヤジオウと地黄(じおう)

薬用基原植物 Rehmannia glutinosa Liboschitz var.purpurea Makino
または Rehmannia glutinosa Liboschitz (Scrophulariaceae)

 昔ドライブ中に目的地以外の地名「ジオウ」という標識を見て思わず寄り道をしそうになったことがあります。仕事柄か、生薬「地黄」のことが浮かび、輸入品だけでなく日本にも栽培地があったのかなと思ったからです。

 身近な薬草ではないですが、漢方処方でよく使う要薬(ようやく)の一つに、地黄があります。中国が原産で日本のような湿気の多い国では自生しないのですが、歴史をたどると、国産化が試みられ、大和国で栽培された和地黄が良品との記載も残っています。地黄は春、やや褐色を帯びた淡紅紫(たんこうし)の花を咲かせることにちなみ、春をつかさどる女神「佐保姫(さおひめ)」の別名も持ちます。

 現在日本薬局方ではゴマノハグサ科のアカヤジオウ(赤矢地黄)またはカイケイジオウ(懐慶地黄)の2種類を基原植物としてその根を使用します。

 地黄は単味で使用せず、多くは加工調製により身体を冷やす乾地黄と温める熟地黄に分け、代表的な処方は、八味地黄丸(はちみじおうがん)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などです。また薬用酒に入っていることもあります。

 例えば「十全大補湯」は地黄、芍薬(しゃくやく)、当帰(とうき)など10の薬草の組み合わせからなり、病後の体力低下、疲労倦怠(けんたい)、食欲不振、手足の冷え、貧血などに効果があるとされています。地黄は、長期の疾患や老化などが原因で引き起こされた症状を目標にして配剤されることがあります。

 今も昔も変わらず病気と闘う時、私たちは薬を探し求めます。私が車中から見た地名は大阪北部への道中でした。病気に立ち向かうことは時に大変な時間がかかります。あきらめずに時を待ちましょう。


202011月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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