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薬と薬草のお話vol.52 大黄(だいおう)とダイオウ

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.52 大黄(だいおう)とダイオウ

薬用基原植物 Rheum palmatum Linné,Rheum tanguticum Maximowicz,Rheum officinale Baillon,Rheum coreanum Nakai またはそれらの種間雑種(Polygonaceae)

 歴史の古い薬草の中には、かつては貴重な生薬だったものが、今は家の薬箱の薬の中でも配合されている身近な生薬に「大黄」があります。

 ダイオウは中国北部が原産とされる、高地に自生するタデ科の多年草で、夏に大きくて長い花茎を出し黄緑色の小花を咲かせる大きな薬草です。

 薬用部位は主に根茎を秋に掘り取り、皮部を除いて日干しにしたものを「大黄」と呼び、古くから薬として使用してきました。

 西洋のギリシャ本草や、日本では正倉院薬物の一つとして収載されているそうです。

 現在の日本では、製薬会社が改良した「信州大黄」が北海道などの寒冷地で栽培され、家庭薬として普及する便秘薬などに配剤されています。

 瀉下(しゃか)成分の一つはセンノシド、他に止瀉(ししゃ)作用のあるタンニン成分等も含まれています。

 漢方処方のなかでは、大黄甘草湯(かんぞうとう)、桂枝加芍薬(けいしかしゃくやく)大黄湯、大黄牡丹皮湯(ぼたんぴとう)、通導散(つうどうさん)、潤腸湯(じゅんちょうとう)、麻子仁丸料(ましにんがんりょう)などです。

 例えば大黄甘草湯は便秘薬の代表的な処方で、頓用(とんよう)(その症状がある時に使う方法)できる処方です。服用後の効果は、就寝前に飲むと8〜10時間後に現れるのが一般的です。

 また慢性化している便秘症状には、防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)や通導散、麻子仁丸料を使い分けます。

 私が初めて出会った大黄は、亡父が手に入れた「錦紋(きんもん)大黄」と呼ばれる種類で、手にするとセンナ葉に感じるのと同じ独特の渋味苦味の匂いがし、黄色っぽいものが手に残りました。

 漢方の勉強を始めた頃、先生から「二つの生薬、大黄と附子(ぶし)を使いこなせると一人前」「大黄の量は夏少なく冬は多めのさじ加減」とも教わりました。

 秋の夜長、古人の教えや先達の言葉を思い起こす時間を過ごしてみるのもいいですね。


2020年9月30日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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