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薬と薬草のお話vol.46 ハスと蓮肉(れんにく)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.46 ハスと蓮肉(れんにく)

薬用基原植物 ハス Nelumbo nucifera Gaertner(Nymphaeaceae)

 冬から春へと変わる頃は、目が引かれるものも、なじみのサザンカの植え込みからツバキの花へと変わります。台所も冬野菜の大根、レンコンからエンドウ豆や菜の花などの春野菜を手にするようになり始めます。冬野菜の中でもレンコンは言うまでもなくハスの根茎ですが、そのハスは漢方生薬として種子を「蓮肉」と称して使うことがあります。

 ハスは日本では大賀ハスのように古くから自生していたとされる水生の多年草で、観賞用や食用にする多くの品種がありますが、他のアジア諸国では薬用にする部位も様々です。日本ではハスの内果皮が付いたままの種子、ときに芽(胚)を除いたものを蒸してから陰干ししたものを蓮肉として用います。

 現在エキス化されている漢方処方の中では、啓脾湯(けいひとう)、清心蓮子飲(せいしんれんしいん)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅっさん)の3処方のみですが、いずれの3処方でも蓮肉は、穏やかに水をさばき胃腸を整える生薬として配剤されています。例えば「参苓白朮散」という処方は、四君子湯(しくんしとう)がベースになってサンヤク・ヘンズ・ヨクイニン・レンニクとシュクシャ・キキョウなどを加えたもので、胃腸が弱い方で慢性的におなかをこわしやすい時、受験期や就職試験の面接など不安や戸惑いが多い時、下痢を起こしやすい時などに使うことができます。

 草木は律義に春の準備、芽吹きを始めています。

 初夏になると、ハスは美しい薄紅色や白い大きな花を見せてくれます。

 私たちも変化を受け止め、次の季節を待ちましょう。

 元気を出しましょう。


2020年3月25日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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