薬と薬草のお話

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vol.32 ダイダイと枳実(きじつ)

薬用基原植物 Citrus aurantium Linné var. daidai Makino,
Citrus aurantium Linné またはナツミカン Citrus natsudaidai Hayata(Rutaceae)

2019年1月29

 幼い頃お正月の締めくくりは、お鏡餅の正月飾りをはずすお手伝いが待っています。三が日の間大人の目がないところで、のし昆布の方はわからないように下から少しずつ短く切っておやつにしたので残りわずか、ところがしっかり丸いダイダイはそういうわけにはいかない。だけど明るい橙(だいだい)色の実も「おいしそう」と手にしたその時、母の一声「苦いよ」。

 柑橘(かんきつ)系の植物にも、たくさんの薬用に供される物があり、現在日本薬局方ではナツミカンやダイダイの未熟果をそのまま、または半分に横切乾燥したものを、生薬名「枳実」と称して用います。枳実は古いもので、果皮が厚く、香りがあり、苦味が強いものほど良品とされています。

 実際煎じ薬の調製に使う小口切りの枳実を手にすると、精油成分などのさわやかな香りが残っています。これを配合している漢方処方には四逆散(しぎゃくさん)、温胆湯(うんたんとう)をはじめ数十処方あり、例えば私たち現代人のストレスからくるイライラ、さらにイライラすると胃痛や腹痛、頭痛などが起こり、手足が冷たくなるものには「四逆散」という処方が効果的です。

 薬味としての枳殻(きこく)は、「理気(滞っている気を巡らす)」という言葉で表現される薬効を目的として配合されていることが多く、具体的には健胃薬、胸のつかえ、腹部の膨満感解消に用いられます。 ただ、こうしてエキス化されたものと生薬そのものを手にして比較すると、香りの点ではエキス化されたものよりも煎じ薬などのほうが、「枳実」そのものは生かされるのではと思う時があります。

 幼い頃のお正月はお年玉やお雑煮、そしてなにより普段忙しく働いている大人も手を止めて集う夢のような日々が続きます。夢がさめたら、次はどんな未来が待っているのでしょう。さあ新しい年に向かいましょう。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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