薬と薬草のお話

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vol.30 クコとクコシとゴジベリー

Lycium chinense Miller または Lycium barbarum Linné(Solanaceae) 
2018年11月11

 一日の仕事が終わり帰路漂う秋気は、「灯火親しむべし」という言葉を思い出させるような冷たさです。部屋に戻って積み上げた本の背の文字を目で追うと、重みで潰れそうになっている枸杞(クコ)茶の本が目に入りました。

 クコは、中国原産のナス科の落葉低木で、夏、ナス科のナスやトマトによく似た愛らしい薄紫色の花をつけ、秋に真っ赤な実を結び晩秋に採取し、陰干しにして薬用にします。

 枸杞子と呼ばれる果実は食用としても身近で、中華料理に使われ、現在では薬用原材料としても中国産が主流です。

 以前はわが国にも結構野生品があり、川の土手や海に近い荒れ地などでよく見受けたそうです。私の学生時代、クコの地上部を刈り取って縄で縛ったものを見知らぬ方が持ってこられ、栽培を考えているのだと話されていたのを思い出します。

 今では日本はもとより外国までその名が知られ、ゴジベリー(gojiberry)と名を変え注目されているようです。

 主要成分の中では例えば果実、根、葉にベタインと称する物質を含んでいますが、今一つ薬効との関係はよく分かっていません。

 一方漢方生薬としての「枸杞子」は、現在日本での繁用漢方294処方中1処方、「杞菊地黄丸(こきくじおうがん)」のみです。

 杞菊地黄丸は、老化や慢性消耗性疾患に使用する「六味丸(ろくみがん)」という処方に菊花と枸杞子の組み合わせが加えられ、古典では明目や補肝滋腎と表現されているのですが、視力減退、目のかすみ、眼精疲労等、目の不調を治すのに適している処方です。ただし、化学成分との併用、例えば血栓防止薬では、効果に影響がでる場合がありますので、過度に枸杞子単独で摂取するのは注意してください。

 秋の夜長には、「良書」と眼精疲労に備えた枸杞子入りの「良薬」を用意して、今日の一日、これで一安心でしょうか。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)