薬と薬草のお話

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vol.29 葛根(かっこん)とクズ

薬用基原植物 Pueraria lobata Ohwi(Leguminosae)
2018年10月29

  • 葛根とクズ

 運動会のアナウンスが秋風に乗って聞こえてくる空が戻ってきました。草木も秋模様のはずですが、私のなじみのクズの茂みが見あたりません。もしかしたら台風後の清掃ですっかり除草されたのでしょうか?

  クズは日当たりの良い林のへりや土手に群生するつる性の多年草で各地に野生し、繁殖力が旺盛で樹木にからみつくので、きらわれることが多いのです。が、根の方は「葛根」と称して漢方薬の葛根湯の原料として役立ちます。また、根からとれるデンプンはクズデンプンといわれ、すぐれた滋養剤です。

  採取時期は根が夏か秋、花は8月頃です。総状につく花は下のほうから咲くので、一番下の花が開きはじめたころを目処(めど)にするそうです。

  代表的な薬方は「葛根湯」で、比較的体力のある方がゾクッとする風邪症状に服用するのがコツです。他方、もともと胃腸の弱い方や、葛根湯に含まれている麻黄や桂皮(けいひ)の香り(シナモンの香り)が苦手な方には、やはり葛根を配剤している「参蘇飲(じんそいん)」という処方が効果的です。2処方とも「葛根」は、発汗、軽い鎮痛、解熱効果があるとされています。

  また最近では主要成分の多量のデンプンのほか、ダイゼインやプエラリンがエストロゲン(女性ホルモン)と似た作用を持っていることから、アンチエイジングのサプリメントなどで注目されています。

  クズはその旺盛な繁殖力で海外ではやっかいな帰化植物とされているようですが、日本では、古来秋の七草にも数えられ、花も生薬「葛花(かっか)」と称してその香りを愛(め)でてきました。私の見失った「葛」は、いやあの太い根をしっかり蓄えているクズのこと、また別のどこかでたとえば雄大な野原で、人間との共生を果たしてしっかり紫紅色(しこうしょく)の花を風になびかせているように思えます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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