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vol.26 厚朴(こうぼく)とホオノキ

薬用基原植物 Magnolia obovata Thunberg (Magnolia hypoleuca Siebold et Zuccarini),
M.officinalis Rehder et Wilson または
M.officinalis Rehder et Wilson var. biloba Rehder et Wilson (Magnoliaceae)

2018年7月28

 幼い時「しゃもじの木」と呼んでいた大きな木がブランコのそばにありました。「しゃもじの木」は、遊び道具のおしゃもじにぴったりの白い大きな花びらを、踏み台に一つ二つと散らせてくれました。

 大きな木で白い花を付ける樹木にはモクレン科のタイサンボクやホオノキ(朴(ほお)の木)などがありますが、薬用樹として使用するのはホオノキのほうで、樹皮を生薬名「厚朴」として使用します。

 日本では夏の土用の頃、幹と枝の皮をはぎ取り陽乾し、刻んだものが使用されます。煎じ用の生薬を手にするとマグノロールやホオノキオールという成分独特の香りがします。

 またホオノキは別名「和厚朴(わこうぼく)」と称して、中国産厚朴「唐厚朴(とうこうぼく)」と区別することがあります。

 「厚朴」の配剤される処方には半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)や平胃散(へいいさん)、麻子仁丸(ましにんがん)等々があり、胃腸の機能を促進、腹部の張りと膨満感を取り除く健胃薬の薬味として、また咳(せき)払いをしたくなるようなときの鎮咳(ちんがい)、去痰(きょたん)薬の薬味として配剤されています。

 例えば「半夏厚朴湯」の中には、厚朴以外に半夏、茯苓(ぶくりょう)、蘇葉(そよう)、生姜(しょうきょう)で構成され、デリケートな体質の人の頭部の違和感、ノドのつまったような症状を解消するのに効果的です。

 ブランコやおしゃもじ遊びもすっかり忘れ、長い時間が過ぎて何度も季節は巡り、春の深緑を極めた後、梅雨を越して、暑く青すぎる夏空に逞(たくま)しく緑の枝葉を突き上げ大きくそびえているホオノキの姿には、今でも見とれてしまいます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)