薬と薬草のお話

ホーム > 薬と薬草のお話

vol.21 アミガサユリと貝母(ばいも)

薬用基原植物 Fritillaria verticillata  Willdenow var. thunbergii Baker (Liliaceae)
2018年2月8日

 春が待ち遠しい頃になると、ここ数年、幼い頃から見慣れていたのではないけれど、庭の地面に顔がつくくらいかがんで探してしまうものにアミガサユリの芽吹きがあります。

 編笠百合(あみがさゆり)は中国原産の植物ですが、園芸品種としても普及したようで、2〜3月にソロソロと緑の芽が土を持ち上げてきます。3~4月には鐘形で淡黄緑色、約3㎝の花を気品に満ちた様子で下向きに咲かせます。その花の内側を覗(のぞ)くと内面にうすい筋状の編笠のような文様があるのでこの名前がついたようです。

 薬用にはアミガサユリの鱗茎(りんけい)を生薬名「貝母」と称し、主に鎮咳去痰(ちんがいきょたん)の薬味として使用します。貝母が配合される漢方処方には、清肺湯(せいはいとう)、滋陰至宝湯(じいんしほうとう)、当帰貝母苦参丸(とうきばいもくじんがん)などが挙げられます。中でも「清肺湯」は貝母を含めて16の薬味から構成され、近年この処方が喫煙からくる慢性の咳(せき)に効く家庭薬として、海外からの方も日本の漢方薬としてお土産品にされるようです。セルフメディケーションとしての清肺湯は、切れにくい痰が出るときや、嗄声(させい)やノドの痛みを自覚するときに使い、著しく体力が低下しているときには使用しないなどをポイントにして使うとよいです。

 「貝母」という名は地下に眠る球根を割ると、母が子供を抱く姿に似ているところからきたといわれてます。

 昔、些細(ささい)な出来事を母子で言い争った後、亡母が植え始めたと思われるこの芽吹きは、その日の母の悲しみが浮かび、抱き合う温(ぬく)もりを求めて探してしまうのでしょうか。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

vol.20 | vol.22