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薬と薬草のお話vol.20 ミカンと陳皮(ちんぴ)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.20 ミカンと陳皮(ちんぴ)

薬用基原植物 Citrus unshiu Marcowicz または Citrus reticulata Blanco(Rutaceae)

 大晦日(おおみそか)店先に並ぶ屠蘇散(とそさん)の香り漂う中で一年を終えると、新しい年です。お屠蘇、この不老長寿を願っての薬酒には一般的に六つの生薬と陳皮を使います。

 生薬「陳皮」はウンシュウミカンの果皮を成熟した時期に採集、保存したものです(薬用としては、ヘスペリジンという成分4%以上を含むという規定があります)。他にも陳皮を使用する漢方薬には、胃腸の弱い方の風邪薬「香蘇散(こうそさん)」、イライラや不眠などに処方される「抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)」など45処方以上のエキス剤に多用されています。またミカンの仲間は様々な種類が薬用とされ、薬用とする部位も多様です。

 漢方薬としての陳皮は、主には気をめぐらせ、胃腸の調子を整える薬味ですが、古典書には陳皮を補薬(不足を補う生薬。人参(にんじん)、地黄(じおう)などが代表的)と共に配剤しているときは補薬としての効果を表し、瀉薬<しゃやく>(瀉下、発汗、利尿など物を体外に出す作用のある生薬。大黄(だいおう)、麻黄(まおう)などが代表的)と共に用いれば瀉薬としての効果を表し、他の薬物の効果を高めるような作用をするという説明もあります。このように組み合わせる薬物によって陳皮の効能は変化するのですが、果皮に含まれるリモネンには中枢抑制による鎮静作用、胆汁分泌促進などが知られています。また含量は低いですが、シネフリンも含まれています。その交感神経への作用からスポーツ選手はドーピングで指定されている成分ですので、注意される方がよいのかもしれません。

 冬の冷気に包まれた朝、さあ、冴(さ)え渡る香りを深く吸い、今年もスタートしましょう。


2018年1月24日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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