ホーム > 薬と薬草のお話

vol.19 カキと柿蔕(してい)

薬用基原植物 カキノキ Diospyros kaki Thunberg (Ebenaceae)
2017年12月20日

 秋から冬へと季節が巡るなか、思い浮かぶ秋景に、空のもと日に照らされツヤツヤと輝く柿の実があります。

 私たちのこの国の秋になくてはならないものの一つとして、碧色の秋空と柿の実の色を挙げる方も多いのではないでしょうか。

 それほど古来、柿は私たちにとって親しみのある果樹ですが、日本では実以外に葉も蔕(へた)も民間薬として用いられてきました。

 特に柿の蔕は「柿蔕」といって、吃逆<きつぎゃく>(しゃっくり)止めの特効薬としてよく知られていたそうですが、私が知ったのは仕事をはじめてからでした。

 柿の蔕にはオレアノール酸やウルソール酸が含有されているとの報告もありますが、有効成分や作用機序(なぜしゃっくりを止めるのか)はまだ不明で、薬の原料としての規格、日本薬局方でも局方外生薬とされ、指標成分の規定もありません。

 一方、吃逆の薬剤として古典にある漢方処方には、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、丁香柿蔕湯(ちょうこうしていとう)、柿蔕湯(していとう)などがあり、特に柿蔕湯は柿蔕、丁子(ちょうじ)、生姜(しょうぎょう)を煎じて用いると長く続くしゃっくりに効果があるとされています。消化器の術後や末期のがんに伴う吃逆は大変つらく身体への負担が大きいと伺いますので、このようなときには、柿蔕は民間療法に由来するものだからと敬遠することなく、症状の軽減に使われることをおすすめします。

 また現在では煎じ薬を準備する手間をかけずに服用できるエキス剤が、市販されています。 春夏秋冬の移り変わり、季節はもう秋の作業から冬に備える支度の時節です。師走を越えて次の年、すがすがしいお正月を迎えたいですね。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

vol.18 | vol.20