TOPへ戻る

vol.18 ベニバナと紅花(こうか)

薬用基原植物 Carthamus tinctorius Linné (Compositae )
2017年11月11日

 小さい頃、触ってはいけなかったものの一つに母の鏡台の引き出しがありました。

 恐る恐る引き出しを開けると、きれいな紅色の大きなクレヨン、いえ、口紅が出てきました。

 日本では古来、ベニバナ(キク科草本植物)を使って口紅(京紅)が作られていました。花期は6~7月で数日開花し、咲き始めは鮮黄色で次第に紅黄色に変わっていく頃、花びらをつみ取り口紅や染料の原料としていました。

 薬用としては「紅花」と称し、特に生薬原料は、ベニバナのなかでも有刺株で花色が橙(だいだい)色から鮮紅色に変わる頃の花びらをつみ取り、そのまま風乾するか、水に浸してできるだけ黄色色素を除去して乾燥したもので、紅(あか)くて黄色みが少なく、独特の香りがするものを良品として使用します。ちなみに紅花の煎じ薬を調合している時は、その独特の香りが漂い、また、煎じると部屋中に漂う香りが母の振り出し薬を思い出させます。

 現在市販の漢方エキス製剤としては、婦人薬としての折衝飲(せっしょういん)やミドルエイジの保健薬、通導散(つうどうさん)があります。その中で紅花は血行をよくする活血などを目的に配剤されています。

 特に通導散は、体力と食欲があって便秘しがちな方に、更年期の症状や便秘薬として使用することができます。化学薬品にはない身体全体の調整、セルフケアの一助になります。

 ベニバナ中の紅色色素カーサミンの構造決定者は、化学者・黒田チカ博士です。

  当時、博士の執念とまでいわれた研究の軌跡を追っていくと、周りでお会いする愛らしい口紅をひかれたこれからの女性薬剤師さんたちに、毅然(きぜん)と未来へ進んでほしいという思いが込み上げてきます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)