TOPへ戻る

vol.15 キキョウと桔梗根(ききょうこん)

薬用基原植物 Platycodon grandiflorum A. De Candolle (Campanulaceae)
2017年8月30日

 母の田舎で過ごす子供の頃の夏休み、初めの数日は、普段なじみのない家の庭や垣根に見かける草木を覚え、迷子にならないようにして遊んでいました。

 ヒマワリの家、暑さにしなだれている赤いサルビアの垣根、それから茎の先端にひとつずつ楚々(そそ)として咲いている青紫の花、キキョウです。

 キキョウは東アジア各地に自生する多年草で、開花期が長く7月から9月ごろまで見ることができ、観賞用に庭先で栽培されることも多い秋の七草、私たちになじみ深い花です。

 薬用としては根を「桔梗根」として使用します。

 採取は秋から翌年春までに根を掘り、日干しして保存し、用います。漢方処方としては荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、十味敗毒湯、桔梗湯などに配剤され、これらの処方はエキス剤として繁用されます。中でも桔梗湯は「桔梗根」と「甘草(かんぞう)」の2味で構成され、扁桃(へんとう)炎や扁桃周囲炎の時に使用します。

 漢方薬といえば比較的長期に服用するものと思われがちですが、桔梗湯はむしろ症状のひどい時だけ服用しても効果的です。

 また、お水と一緒に口に少し含んでからのみ込むと、のどの痛みにより効果的です。朝晩の寒暖の差でのどの痛みを感じる時、早めに服用するとよいです。

 キキョウの花を見ると、夏休みの終わり頃に祖母の「もう帰るの」と何度も聞いてくる淋(さみ)しげな顔と、学生時代の薬用植物の講義で「キキョウは1属1種である」との教授の声が思い浮かび、私にはなぜか少し淋しい、センチメンタルブルー色に思えます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

vol.14 | vol.16