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vol.14 シソと紫蘇葉(しそよう)

薬用基原植物 Perilla frutescens  Britton var. crispa W. Deane (Labiatae)
2017年7月27日

 紫陽花(あじさい)が鮮やかに目に映る雨の日、台所は母が仕事帰りに買い込んできた赤紫蘇と梅の実の香りでいっぱいです。昔から紫蘇は枝付きの方がよいという母の主張で、家族は手を赤くしながら、シソの葉っぱむしりが始まります。

 シソは中国南部地方原産で、古い時代に渡来した一年草の栽培植物です。

 その葉に含まれるシアニジンという色素は、酸にあうと紫紅色になり梅干しや漬け物に特有の色付けをします。また古来日本では夏の食欲不振、夏バテや夏カゼにシソやミョウガなど香りの強いものを薬味として使い、胃腸の働きを整えるために使われてきました。薬用生薬としては赤紫蘇の葉を「蘇葉」または「紫蘇葉」と称し、初夏に採取、陰干ししたものを用います。 また種子の方は生薬名「紫蘇子」として、秋に採取して用い、アオジソやオオバは使用しません。

 この「蘇葉」が入っている漢方処方の一つに、これからの暑い季節、冷たいビールやアイスをとりすぎて胃腸の調子を悪くしたときや体がだるく感じる軽い夏カゼには、「藿香正気散(かっこうしょうきさん)」を常備しておくと重宝します。

 藿香正気散は、蘇葉、藿香など香りのよい薬味など13種の生薬で構成され、現在ではエキス化され市販されています。

 母と一緒につけ込んだ梅干しと梅酒の瓶は、数回の夏を経て今では古めかしい琥珀(こはく)色に変わっています。

 けれど台所から聞こえる母と皆の笑い声はセピア色に変わることなく胸の奥からいつでも取り出すことができます。

(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)