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薬と薬草のお話vol.11 ウドと独活(どっかつ)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.11 ウドと独活(どっかつ)

 ある日、父が庭の片隅で穴掘りを始めました。私がそばに行くと、その穴の上に藁(わら)むしろをかぶせて、「ウド、美味(おい)しくなるよ」と話してくれました。子供の私は、「ウド」が何かがわからず、宝物を埋めているように見えました。

 ウドは別名「独活」といわれますが、実は「独活」と呼ばれる生薬は日本と中国では基源植物が異なっていることがあります。中国の古典書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」では、「独活」の別名を「羌活(きょうかつ)」とする記載がありましたが、日本の「本草和名(ほんぞうわみょう)」や「大和本草(やまとほんぞう)」では、「独活」を「ウド」と記しています。現在の日本薬局方では、「羌活」はセリ科の植物、「独活」はウコギ科のウドです。

 例えば腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛の効能をもつ処方、疎経活血湯(そけいかっけつとう)は痛みに効果的な処方として今でも繁用されていますが、この処方中の構成生薬は、製薬会社によって、「羌活」(セリ科)か「和羌活」(ウコギ科)かが異なります。現在では、「羌活」の代用生薬としての「和羌活」は、日本独自の使い方ともされています。古来変わらぬものと思われている漢方の世界も、こうして時代時代の基源植物をたどっていくと、歴史の背景の影響が色濃く表れ、変遷しています。

 ところで、あのあとしばらくして、晩春の食卓で、馴染(なじ)みのない新鮮な香りの白くて薄い短冊の野菜、ウドのお吸い物と出会いました。今思うと、父はウドの室をつくり、株を暗いところで軟化栽培していたようです。爽やかな香りのウドのお吸い物、春から夏へと季節の移ろいを告げてくれる草木の一つですね。


2017年4月26日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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