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薬と薬草のお話vol.1 芍薬(シャクヤク)

広告 企画・制作/読売新聞社広告局

vol.1 芍薬(シャクヤク)

 先日、知人から自生しているヤマシャクヤクの写真を見せていただく機会がありました。山林の中、静かに一輪一輪、背筋(花柄)を伸ばしてたたずんでいる様子に目を奪われました。

 その名に「薬」という字が使われているように、芍薬は漢方生薬の一つ。日本へは平安時代に薬草として伝えられ、寺院や貴族の庭園などに植えられたものが、次第に広がったようです。薬用には、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)の根を使います。

 芍薬を使用した薬には、婦人薬といわれる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、四物湯(しもつとう)などがあります。また身近な漢方胃腸薬として芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)と安中散(あんちゅうさん)の(*)合方が市販されています。

 特に芍薬甘草湯は、医療用漢方エキス剤としてよく使われています。漢方の原典「傷寒論(しょうかんろん)」では、胃けいれん、神経痛、筋肉痛などの疝痛(せんつう)発作に服用するとあり、現在では「こむら返り」の薬としても処方されています。

 芍薬はまた、観賞用としての改良品種も多く、様々な改良がなされています。清楚(せいそ)な一重の「和芍」に対し、欧米の八重咲きの「洋芍」は豪華。とりわけ19世紀のフランスの女優の名前にちなんだ「サラベルナール」の華やかさは、いくら眺めてもつきません。

 洋の東西を問わず、芍薬の花を見ると女性の姿が思い浮かぶのですが、その見事さとは裏腹に、なぜかサラの切ない思いが浮かぶのは、私だけでしょうか。


2016年6月2日
(笹川 悦子/笹川薬局社長/薬剤師)

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