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 暑さが続くこの時期は、睡眠不足や疲労の蓄積などから、全身の倦怠(けんたい)感や食欲不振に陥る人は少なくありません。体調不良を改善し、健康を保つには生活習慣の見直しやバランスのよい食事が必要です。そこで、8月31日の「野菜(8・31=やさい)の日」に合わせて、野菜の健康効果や減塩による生活習慣病の予防などについて、国立循環器病研究センター(国循)の4人の先生にお聞きしました。

――夏の終わりに体調を崩す人は多いですが、どんな原因が考えられますか?

吉原 夏から秋にかけての気温や湿度の変化に対して、私たちの体は順応しようとしますが、かかる時間に個人差があります。特に外界の変化に追い付けず、タイムラグが大きい人は不調を感じやすいです。加えて近年、暑さの厳しい夏場の脱水を防ぐために意識的・感覚的に塩分を普段より多めに取る人が増え、秋に入ってもそのまま続けていると、血圧に影響が出てきます。さらに夏場に血圧が下がるために降圧剤を減らしている人は、秋になると季節性の変動も加わって血圧が上がりやすいです。

――健康維持にはバランスのよい食生活が大切です。特に野菜は積極的に取りたいですね。

竹本 野菜には動脈硬化や脳梗塞を防ぐ抗酸化作用が高いビタミンCやEの他にミネラル類、マグネシウム、食物繊維が多く含まれていて、年中取ってほしい食材です。色の濃い野菜には抗酸化作用が高いポリフェノールが豊富に含まれていますので、トマトやナス、キュウリ、ゴーヤなどの夏野菜は皮ごと食べることをおすすめします。

吉原 野菜にはカリウムも含まれていますが、体内のカリウムが少ないとナトリウム(塩分)の再吸収が進み、血液量が増えて血圧が上がる傾向があります。

平野 野菜は脂質やたんぱく質、糖を含まず、補助的な食材となりがちですが、肉や魚などのたんぱく質が豊富な食材とバランスよく一緒に食べてほしいです。例えば野菜サラダに豆腐や魚、サラダチキンなどを添えるといいでしょう。たんぱく質が含まれる素材には味のあるものが多く、減塩につながります。また、食べる順序として、野菜を先に食べること(ベジ・ファースト)で血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待できます。

――食生活の改善には、塩分の取り過ぎにも気を付けたいです。

吉原 私たちの体は、塩分を取り過ぎると体内の塩分濃度を一定に保つため、血液中に水分を取り込みます。すると血液の量は増加し、心臓がより多くの血液を送り出すことで血管にかかる圧力が上昇します。これが「血圧が上がる」仕組みです。血圧が高い状態が続くと心臓への負担が大きくなり、動脈硬化や心臓肥大が進行し、心臓病や循環器病を発症しやすくなるのです。

 日本人の塩分摂取量は1日平均で約10gですが、厚生労働省推奨の摂取量は男性8g未満、女性7g未満、日本高血圧学会のガイドラインでの高血圧患者さんの摂取目標は6g未満、世界保健機関(WHO)は同じく5gとしています。塩分摂取量を減らすと血圧は下がり、循環器病で亡くなる人の数も減るとされています。

――国循の「かるしおプロジェクト」や家庭でできる減塩について教えてください。

赤川 軽(かる)く塩(しお)を使っておいしさを引き出すという「かるしおレシピ」は、塩分制限でもおいしい病院食として注目されていて、一般の方にも健康意識を高めてもらうためのレシピ本も出版しています。「かるしお認定制度」では、1食あたり2g以下、30%減塩の基準を満たす製品に対して「かるしおマーク」の表示を認め、産官学が連携して循環器病の予防に取り組んでいます。

 家庭では、調理の際、目分量ではなく計量スプーンできちんと塩分を量ったり、だしでうまみを出したりすることも大切です。コンビニ弁当などは成分表示をよく見て、塩分の高い漬物などは残したり、ソースやしょうゆを追加でかけないよう心がけましょう。また、「かるしおマーク」がある調味料や食品を取り入れるのもおすすめです。

平野 減塩にこだわり過ぎて食事量自体が減ってしまい、全体のカロリーが不足してしまうのは要注意です。年齢や活動量、健康状態に合った適切なカロリー摂取を心がけてほしいです。