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 気温の変化が激しく湿度も高い梅雨の時期は、体調不良になる人が多いもの。この時期を乗り切り、夏本番に向けて元気に過ごすために気をつけたいポイントをご紹介します。今回のテーマは「紫外線対策」。大阪国際がんセンターの皮膚科専門医、爲政大幾先生に紫外線のリスクや対策、紫外線が原因と考えられる皮膚がんについてお聞きしました。

――梅雨の時期は紫外線量が少ないイメージですが、対策は必要なのですか?

 紫外線は地上に届く太陽の光の中で最も波長の短い光で、UVAとUVBに分かれます。それぞれの肌への影響ですが、UVAは皮膚の真皮や皮下脂肪まで達し、長時間浴びることで加齢性の変化(シワ、たるみなど)を生じます。それに対して表皮細胞に作用するUVBは日焼けの早期に赤みや腫れなどを起こします。

 紫外線の照射量は春分の日を過ぎるころから多くなり、6~8月がピークです。梅雨の曇天下でも紫外線量は晴天時の65%あります。従って健康被害を防ぐために、曇った日でも紫外線対策は必要なのです。

――近ごろのお母さんは皮膚へのダメージを恐れるあまり、お子さんが日光浴をするのを避ける人が多いようです。

 ここ数年、「ビタミンD欠乏性くる病」と診断される乳幼児の数が増えています。骨の発育や免疫、メンタルの健康維持に関わるビタミンDは日光に当たることによって生成されます。極端な遮光はビタミンDの生成を妨げ、子どもでは「くる病」、高齢者では「骨粗しょう症」のリスクが高くなる可能性があります。もちろんバランスの取れた食事が重要なことは言うまでもありません。ビタミンDを作るのに必要な日光照射量は肌の色や生活習慣、地域によって違いはあるものの、例えば大阪では1日15分も日に当たれば十分です。ただし、1日のうちで紫外線が強い10~14時は紫外線対策をしっかりしてください。

――日焼け止めについて、知っておいた方がよい基礎知識を教えてください。

 日焼け止めは紫外線対策として有効な方法のひとつです。パッケージには「SPF」と「PA」が表記されています。「SPF(Sun Protection Factor)」はUVBを防ぐ力を示しており、20分程度の間に何もつけていない素肌と比べて、日焼けが始まるまでの時間を何倍にのばすことができるのかという目安になります。例えば、SPF30の場合、20分×30で600分抑制される計算になります。一方、「PA(Protection Grade of UVA)」は、UVAを防ぐ効果を表す目安です。4段階の「+」で表し、「+」の数が多いほど効果が高いです。

――効果的な日焼け止めの選び方や塗り方とは?

 クリームやローション、スプレーなど様々なタイプがありますので、使用感や塗りやすさ、落としやすさなどを考えて選ぶとよいと思います。少なすぎる量では効果が期待できませんので十分な量を塗り、数時間ごとにこまめに塗り直すことが大切です。耳や唇、首の後ろ、手や足の甲なども意外と紫外線にさらされていますので、塗り忘れのないようにしましょう。

 日常生活ではSPF20~30程度で十分な効果が期待できますが、屋外スポーツをする場合はSPF50がおすすめです。特に登山をする方は標高が上がるほど紫外線が増加しますので注意が必要です。また、汗をたくさんかくスポーツや水泳などをする人はウォータープルーフタイプが便利です。乳幼児に塗る場合は低刺激性の子ども用を選ばれると安心かと思います。

 日焼け止めを正しく使用すると同時に、過度に肌を露出しないことも大切です。日傘や帽子、長そでの羽織るものなどで紫外線からガードすることが有効です。

――紫外線のリスクとして肌の老化だけでなく、皮膚がんの原因となることも心配です。

 紫外線による発がんのメカニズムを解説しますと、紫外線が肌に当たると表皮の細胞にダメージを与えます。紫外線はDNAの損傷や活性酸素の産生による細胞膜の損傷を引き起こします。特に深刻なのはUVBによるDNAの損傷で、遺伝子変異を起こして皮膚がんの危険因子となるのです。

 皮膚がんには様々な種類がありますが、紫外線によって引き起こされるリスクが高いのは主に、日光角化症、基底細胞がん、悪性黒色腫(メラノーマ)です。前がん状態である日光角化症は遮光することで軽快することがありますが、有棘(ゆうきょく)細胞がんに進行することもあります。基底細胞がんは中年以降の発症率が高く、男性にやや多いです。病変部は黒っぽく、顔面に発生することが多いのが特徴です。悪性黒色腫も文字通り黒や黒褐色の色素斑・腫瘤(しゅりゅう)で、日本人では四肢の末端に多く発症しますが、紫外線の当たる部位に生じるタイプも増える傾向にあります。転移しやすいので注意が必要です。

――皮膚がんになりやすいタイプの人や日常生活で気を付けることについて教えてください。

 皮膚がんが発生しやすいリスクとしては▽赤道に近く日光の強い地域に住んでいる▽皮膚の色調が薄い(メラニンの量が少ない)▽紫外線を浴びるとすぐ赤くなる▽屋外労働が多い人――などです。皮膚がんは一般的に白色人種に多いがんで、地域性や肌タイプという観点からは、日本人は皮膚がんの発生率が低いです。また、目に見える場所に発症しますから、発見しやすいのが特徴です。早く見つけて、摘出すれば予後は良いです。悪性黒色腫の5年生存率は7割を超えています。さらに、皮膚がんの割合はがん全体の数パーセントですので、極度に恐れる必要はありません。

 しかしながら、長年の紫外線の蓄積が中年以降の皮膚がん発症に深く関わっていることは事実ですので、子どものころからの対策は不可欠です。皮膚がんの注意事項についてまとめましたので(※下の表を参照)、ご本人やご家族は日ごろから皮膚の変化に注意しておくことも大切だと思います。