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 40歳以上の日本人の約8割がかかっている歯周病。糖尿病や心疾患はもちろんのこと、最近では肝疾患やアルツハイマー病など様々な病気と密接な関係があることがわかっています。
 6月4~10日は「歯と口の健康週間」、そして毎月8日は「歯の日」。そこで今回は、歯周病の正しい知識と有効な予防法などについて、NPO法人日本臨床歯周病学会理事長の歯科医・浦野智先生に聞きました。

全身の健康に悪影響を及ぼす〝あなどれない〟病気

 歯周病は「静かな病気(サイレント・ディジーズ)」。初期は目立った症状がなく、ゆっくりと進行し、気づいた時にはかなり進行している場合が多いです。
 重症化すると歯を支える骨が溶けるだけでなく、歯周病原因菌が原因となって体内のあちこちで炎症が起こり、心疾患や脳血管疾患、肝疾患、高血圧などの発症や悪化につながります。また、糖尿病の合併症のひとつとしてもよく知られています。
 歯周病は中年期以降の日本人の5人中4人がかかっている〝国民病〟。にもかかわらず、60歳を超えると受診率が極端に下がってしまうのが現状です。この意識の低さは、歯周病が生活習慣病と密接な関わりがある〝全身病〟だという事実が浸透していない証拠。
 さらに、多くの歯が失われることで誤嚥(ごえん)性肺炎も起こりやすくなる一方、嚙(か)む力が低下して脳への刺激が減ることで認知症が発症しやすくなる、という報告もあります。

歯がなくなってしまう恐ろしさ

 歯周病は歯と歯肉の間のわずかなすき間の中に細菌(歯周病菌)が繁殖して起こる炎症です。誘因としては、不規則な生活や食習慣、ストレスや歯ぎしり、生活習慣病や遺伝などが挙げられますが、中でも特に気を付けたいのが喫煙です。たばこのニコチンが歯周病菌に対する免疫や細胞の働きを低下させるからです。
 歯周病の中にも、歯肉の炎症でとどまっている比較的軽度の「歯肉炎」、さらに歯を支える歯槽骨に影響がおよぶ「歯周炎」とに分類されます。通常その進行は緩やか(慢性炎症)ですが、全身疾患を有していたり歯周病罹患(りかん)者の約1割と言われる「侵襲性歯周炎」の場合、進行はとても早くなります。
 放置しておくと、やがて歯を支えている歯槽骨などを破壊し、歯がぐらぐらしたり、抜けてしまうことも。要するに、歯周病が怖いのは、むし歯と違って何本もの歯が一度に失われてしまうことなのです。

歯周病かな?と思ったら

 歯周病になったら、まずは原因を除去してできるだけ進行を食い止めることが大切です。
 近年、歯周病の治療は進歩し、かなり進行していても様々な方法で悪化を食い止めることが可能です。どんな治療を選択するかについては、専門医・認定医などに相談されることをお勧めします。
 まず、自分でできる予防は、生活習慣の改善と、毎日、歯ブラシで正しいブラッシングをすること。自分ではきちんと磨けているつもりでも、歯垢(しこう)が残っているケースは少なくありません。
 定期的に歯科医院で検診を受け、正しい歯ブラシの使い方を身に付けましょう。歯ブラシは、いわば、患者さん自身が使える「治療道具」だと思ってください。歯垢を除去するには毎食後のブラッシングが理想ですが、外食などで難しい場合は、就寝前に特に丁寧に磨きましょう。
 歯周病の予防や早期発見にはこうしたセルフケアだけでなく、身近にいる人の「気づき」も大切。病状が進行すると口臭が強くなるのですが、赤の他人だと変に気を使ってなかなか本当のことを言ってくれません。そういったことを本人に伝え、受診を勧められるのは、家族や親しい友人といったパートナーですから。
 歯は、人と会話したり笑ったりといったコミュニケーションを図るためにも重要な道具。歯がそろっていることや不快な口臭がないことは、生きがいややりがいといった日々の生活の質にも影響してきます。かかりつけ歯科医との信頼関係を築きながら、歯周病の予防に努め、良い口腔(こうくう)環境を保ってください。