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 今から盛り上がりを見せる〝2020年〟に向けて、喫煙しない人がたばこの煙を吸い込む「受動喫煙」の対策が急がれています。厚生労働省は公共施設や飲食店内を原則禁煙とする法改正を検討。たばこが自分や周囲に与える影響について、大阪国際がんセンターの田淵貴大先生にお話を聞きました。

――たばこの煙は「他者危害」
 長年の研究の結果、たばこには非常に多くの害があることがはっきりわかっています。一つは喫煙者自身のがんや慢性疾患などの病。もう一つは、たばこを吸わない人への健康被害=受動喫煙の害です。家庭や職場、飲食店などの屋内空間では、強制的に煙を吸わされることになり、さまざまな症状が表れます。特に子どもの受動喫煙は、乳幼児突然死症候群の原因になることもわかっており、その影響は深刻です。
 また、受動喫煙対策がいまだにできていない職場も多く、そんな環境で上司や先輩など力関係が強い人々にたばこを吸われると、なかなかやめてほしいとは言いづらいものです。喫煙者にもたばこを吸う権利はあるかもしれませんが、他人にその煙を吸わせる権利はありません。「何人たりとも他人に危害を加える権利はない」のと同じで、第三者に有害な煙を吸わせる受動喫煙は「他者危害」にほかなりません。その点を喫煙者も非喫煙者も認識することが大切です。

――たばこに苦しめられる喫煙者
 たばこの害が知られるようになってきたのは、1950年代以降。紙巻きたばこの生産技術が発達し、大量生産とともに広く普及したことが背景にあります。近年、減少傾向にあるとはいえ、まだ約20%もの成人が喫煙しています。少しだけなら大丈夫というのは間違い。問題なのは吸った本数より、吸い続けた期間のほうなのです。1日数本の喫煙でも肺がんのリスクは2倍、喉頭がんのリスクは16倍に上がります。喫煙していると寿命は平均で10年縮みます。これほど害があるのにやめたくてもやめられず、喫煙ルームでは喫煙者同士の受動喫煙でさらに傷つけ合っているのが現状です。
 中には、ストレス解消のために吸うという人も多いですが、実は、たばこ自体にストレス解消効果はありません。たばこによって解消されるのは、ニコチン依存症によるストレス。でもこれは、そもそもたばこを吸わなければ生じなかったストレスなのです。

――禁煙できる環境をつくる
 今たばこを吸っている人ができる健康対策は、「一日でも早く禁煙すること」です。病院の禁煙外来に相談するのも一つの手段ですが、自力でやめている人もたくさんいます。ニコチン依存症の禁断症状は3日も空ければ消えるので、まずは金曜日の夜から家族と過ごす土日を禁煙にしてみませんか。もし失敗しても一回で諦めず、何度でもチャレンジしてください。世の中には雑多な情報があふれていて、中には「実は喫煙は体にいい」などという明らかなデマもあります。肝心なのは、自分を甘やかす「都合のいい情報」にだまされないこと。
 たばこを吸いづらい環境は、逆に言えば「やめやすい環境」でもあるのです。子どもや部下、アルバイトといった人たちは禁煙してほしくても言いづらい弱い立場にいます。屋内禁煙化を進めることで、誰もが健康で安心して暮らしていける環境をつくっていきましょう。