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 「百薬の長」といわれる一方、飲みすぎると心身の健康を損なう恐れのあるお酒。飲酒によって起こる問題は、事故や病気による早死から生活苦や家庭内暴力まで広範囲にわたります。2月25日、東京・虎ノ門の発明会館ホールで健康公開講座を開催。お酒と上手に付き合い、不適切な飲酒習慣を克服する方法について専門家にお話しいただきました。

主催/読売・日本テレビ文化センター
協賛/日本新薬株式会社

講演1お酒による健康被害を減らすために

――お酒による健康被害は心身両面で多岐に及ぶ
 本日はみなさんに、お酒の害をよく知った上で、適切な付き合い方をしていただくための情報提供をいたします。
 飲酒による障害としては、まず口腔(こうくう)、喉頭、咽頭、食道、大腸、肝臓などのがんが挙げられます。アルコールはあらゆる臓器に浸透し、炎症を起こします。分解の過程でできるアセトアルデヒドは臓器毒性が強く、アルコールそのものにも発がん性があります。特に、少量で顔が赤くなる人は食道がんになりやすいことがわかっています。
 また、体は、アルコールから摂取したカロリーを優先的に消費し、他の食べ物由来のカロリーの消費を後回しにします。そのため、過剰となった脂肪が肝臓に蓄積し、脂肪肝を引き起こしやすくなります。脂肪肝は肝臓疾患や心疾患の原因となる、いわば「生活習慣病の温床」です。逆にビタミンやミネラルはアルコールによって過剰に排泄(はいせつ)され、慢性的に不足するようになります。
 脳への影響も大きく、連続して大量飲酒すると、脳が萎縮して記憶力に障害が出たり、うつ病やパニック障害、不安障害などの精神障害を誘発したりします。また、飲酒を続けると一定の割合でアルコール依存症になり、自殺率も高くなります。ある研究によると、依存症の人は一般の100倍ぐらい自殺率が高いといわれています。
 睡眠障害も起こります。アルコールは睡眠導入には有効ですが、眠りを浅くし、十分眠ったはずなのに疲れが取れないことも。その結果、睡眠のリズムが狂い、次の夜も不眠になりやすく、さらに寝酒の量が増えるという悪循環になりがちです。

――アルコールは薬の一種 だから適量を守りたい
 ぜひ覚えていただきたいのは、「アルコールは嗜好(しこう)品ではなく薬」だということです。人類との付き合いがあまりに古いので意識されにくいですが、中枢神経を抑制する麻酔薬と同類です。薬ですから当然、副作用、耐性、そして依存性があります。薬の副作用には敏感なのに、お酒は好きなだけ飲むというのは変な話なのです。
 ではアルコールの適量はどのくらいなのでしょうか。健康への影響は純アルコール換算で何グラム摂取したかで決まります。厚生労働省の「健康日本21」では1日平均20グラム以下を推奨しています。ビールなら中瓶1本です。女性や高齢者、飲酒で顔が赤くなる人はさらに適量が少なくなります。
 いざ節酒を思い立ったら、血糖値や血圧の数値を改善する、睡眠の質を上げるなど具体的な目標を作り、まわりにも宣言しましょう。無理な目標は設定せず、飲酒記録をつけて定期的に振り返るのがコツです。3か月続ければ習慣になり、健康状態が目に見えて改善します。
 それでも節酒がうまくできない場合は依存症が疑われます。自力での回復は難しいので、専門の医療機関を受診してください。

講演2大切な人を地域で支える

――依存症とその予備軍は社会の中で孤立しがち
 私は大学病院でソーシャルワーカーをしている時に、飲酒問題とご家族の苦しみを知りました。日本には純アルコール換算で1日60グラム以上飲む多量飲酒者が推計約980万人、アルコール依存症者と予備軍が約290万人、治療が必要な方が約109万人いるといわれます。ところが109万人のうち、実際に治療を受けているのはわずか7%に過ぎません。
 依存症の方は、自分に飲酒問題があることを認めず、助けを求めない傾向にあります。ですから、依存症という病気だと知らず、治療を受けないまま亡くなることも多いのです。

――周囲の気づきと支えが依存症からの回復を促す
 アルコール依存症だった方が、適切な治療を受け、アルコールという薬物をやめることができ、回復して普通に生活している例は多くあります。
 依存症の根っこには、これまでの人生で抱えてしまった「生きづらさ」があります。そのためこの苦しみを共有する仲間の存在が回復のポイントとなります。自助グループや家族会とつながることが大切です。また、ご家族、特に子どもは社会的な困難に巻き込まれやすいので、ご家族への支援も不可欠です。
 飲酒問題を抱える人に周囲が気づき、早期に治療につなげることが、さまざまな社会問題を食い止めることになります。国の「アルコール健康障害対策基本法」を受け、地域での取り組みも始まりました。ぜひみなさまのお力をお貸しください。

教えて! お酒健康 Q
来場者からの質問に講師の先生が答えました

Q アルコール依存症かそうでないかは、どのようにして見分けるのですか。
 依存症とは、飲酒による問題が表面化し、周囲から「お酒を減らすか、やめたほうがいいよ」といわれたり、身体合併症が起きたりしているのに、断酒あるいは節酒ができず、飲酒問題が続いている状態です。毎日飲んでいるかどうかは関係ありません。たまにしか飲まなくても、そのたびに問題を起こすようなら依存症です。

 

Q 週に2日連続して休肝日をとるようにといわれますが、なぜですか。
 1日だけでは、分解しきれないアルコールが脳内に残っている可能性があるからです。依存症を予防するには、脳の中に全くアルコールのない状態が一定時間必要です。週に1日でも、分けて2日でも、休肝日は設けたほうがよいですが、前日や翌日に大量に飲まないようにしてください。

Q 家族がアルコールの問題を抱えています。どうすればよいでしょうか。
 まず、ご家族が専門病院や保健所など公的機関に相談に行きましょう。本人を受診させるスキルを持った病院もあります。家族会に参加し、依存症から回復された当事者の家族の知恵を借りるという方法もあります。