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 高齢化社会を迎え、今、健康で元気に長生きする「健康長寿」への関心が高まっています。そこで、日本の伝統食であるこうや豆腐の魅力や有用性に触れながら、「日々の食生活を工夫して、幸せで健康に生きること」について考えるシンポジウムが10月28日、イイノホール(東京都千代田区)で開催され、医療や食などの専門家3人がそれぞれの立場で語り合いました。

第1部基調講演

「幸せで、健康で、長生きの秘訣 〜こうや豆腐の力〜」

――脳卒中多発地域で始めた健康づくりへの取り組み
 今日は、幸せで健康に生きるためのお話をしますが、大事なのは幸せに生きることです。もちろん、そのために健康は大切ですが、病気であっても幸せに生きている人はたくさんいますし、病気になったからといって、決して不幸せなわけでもありません。今日は、そんなことも含めてお話をしたいと思います。
 私は30年ほど前に、脳卒中が多発していた長野県に赴任しました。脳卒中は助かっても後遺症が残ります。ですから、まず脳卒中にならないようにしなければと思い、脳卒中予防のための講演活動を始めました。同時に、県内の保健師さんや保健補導員さんといったボランティアの方たちが地域をまわり、人々に生活習慣の改善や健康づくりのアドバイスを行う活動も始めました。そして、それが少しずつ住民たちの心を変え、行動を変え、その積み重ねによって、短命県であった長野が今では長寿日本一となりました。現在、私たちの行っている地域包括ケアシステムというのは、この活動が大きな土台となっています。

――日々の食生活から生活習慣をほんのちょっと変えてゆく
 人は一度身に付けた習慣を変えられないものですが、ほんのちょっとなら変えられる。そして、そのほんのちょっとで健康は手に入ります。大切なのは一人ひとりのセルフコントロール。そうした行動変容をぜひ毎日の食生活に起こしてほしいと思っています。長野県では、まず減塩に取り組み、とにかく野菜をたくさん食べるようにしました。抗酸化作用のある野菜は、がんやさまざまな病気の予防につながります。それから、こうや豆腐や寒天などの伝統食を食べること。食べ物が豊かでなかった時代に、自分たちをどう守るかと考えて作られた伝統食には、昔の人の知恵が詰まっていて、現在、科学的にも体によい作用を及ぼす成分がたくさん含まれていることが証明されています。最近、こうや豆腐にはレジスタントタンパクという成分が含まれていて、これが血糖値や悪玉コレステロール、中性脂肪を下げる働きをすることもわかってきました。

――生きがいを持つことが幸せで長生きの秘訣(ひけつ)――地域包括ケアの考え方
 こうした毎日の食生活への取り組みが長野県を長寿県にしたわけですが、もう一つ、長野県の高齢者就業率が日本一であることから、生きがいを持っていることも長寿の大きな要因だろうといわれています。私たちが行っている地域包括ケアとは、人々の健康づくりから在宅ケア、死を看取(みと)るまでを地域で取り組むというものですが、健康づくりをセルフコントロールによって行うように、「自分の人生は自分で決める」という考え方を大切にしています。ですから、どんな末期の患者さんでも、最後に家族と日帰り温泉旅行に出かけたいとおっしゃったなら、理学療法士さんなどの専門家のもと、機能訓練を行います。すると、それが生きがいとなって、患者さんの顔がいきいきとしてくるのですね。つまり、病気であっても幸せに生きることはできるのです。人間は弱いようで強い。なかには、死期が迫りつつも、誰かに何かをしてあげたいという気持ちを抱く人もいて、科学的にもそうした感情が起こる際にはオキシトシンという、人を元気にさせてくれる幸せホルモンが分泌されることがわかっています。
 今、日本は2025年問題に直面しています。団塊の世代が後期高齢者の年齢に達する2025年には、医療費の財源、医療介護施設、医療介護従事者のすべてが不足し、介護難民が多数生まれるだろうといわれています。そこで今、こうした地域包括ケアシステムに注目が集まっているのです。日々の食事を大切にし、みんなで健康づくりに取り組み、困っている人には手を差し伸べ、生きる目標を持つ。このとても温かいシステムが、これから日本中に広がっていくことを期待しています。

第2部パネルディスカッション

「こうや豆腐でおいしく健康に」

パネリスト:廣田 孝子 氏、白井 操 氏
コーディネーター:鎌田 實 氏

こうや豆腐で若々しく元気に

京都光華女子大学健康科学部
健康栄養学科教授

廣田 孝子

 日本人が世界一長寿である理由の一つは、食生活です。日本食は脂質の摂取量が少なく、低カロリー。お米を主食とし、魚介類や大豆製品、野菜をよく食べます。なかでも良質なたんぱく質や栄養素を豊富に含む大豆製品は、非常に優れた健康食品です。
 ところが最近の食生活の調査では、手軽な炭水化物や脂肪で空腹感を満たしてしまう傾向があって、世代を問わず年々たんぱく質の摂取量が減少しています。時々、「私はお豆腐を食べているから大丈夫」とおっしゃる方がいますけれど、残念ながらお豆腐の約90%は水分なのですね。
 そこでお薦めしたいのが、豆腐をぎゅっと濃縮したこうや豆腐。こうや豆腐には、体を作り、免疫機能を高めてくれる良質なたんぱく質に加え、骨粗しょう症や高血圧、大腸がんに予防効果のあるとされるカルシウム、貧血やスタミナ増強に有効な鉄分、細胞の合成を促進する亜鉛、認知症やがん、脂肪肝の予防によいとされるコリン、そして血管を若々しく保ち、これもまた認知症予防によいとされるオメガ3脂肪酸を豊富に含んでいます。具体的には、こうや豆腐1枚で、1日に必要なたんぱく質の17%、カルシウム16%、鉄分11%、亜鉛11%、コリン20%、オメガ3脂肪酸24%が摂取できるといわれています。そのほか抗酸化作用の強いイソフラボン、生活習慣病予防に効果的な食物繊維も含み、最新の研究によれば、凍結乾燥する過程でこうや豆腐にはレジスタントタンパクという物質が生まれ、これが血糖値や中性脂肪を低下させ、善玉コレステロールを上昇させるということもわかってきています。つまり、メタボ予防にも期待ができるということですね。
 暦年齢と生理的年齢は同じではありません。見た目の若い人は、医学的な肉体年齢も若いというデータもあります。どうか毎日の食事を大切に、いつまでも若々しく元気に長生きしていただきたいと思います。

こうや豆腐をもっと身近な食材に

料理研究家 白井 操

 30年ほど前、おせちの本を出しました。当時はおせちを作る人が多かったので、とってもよく売れました。今は、おせちを買う人のほうが多くなったようですね。黒豆の産地である兵庫県の篠山でも、黒豆を袋単位で買う人が少なくなったと聞きました。最近は、豆を炊く(煮る)、乾物を戻すなど時間のかかる料理は敬遠されて、ぱぱっとできるものが求められます。食べるほうも作るほうも「待つ力」が失われてしまったのでしょうか。忙しくて料理にあまり時間をかけていられない現実もあるのでしょうけれど、戦争を境に私たちの親世代あたりから、先人たちの料理をうまく継いでこられなかったのではないかとも感じています。
 こうや豆腐は、そんな先人が編み出したすばらしい食材です。私自身、このフォーラムに参加するようになって、こうや豆腐の面白さに気づき、たくさんメニューを開発しました。以前は、戻すのに少し手間だったこうや豆腐も、今は改良が進んで、ちょっとお水に漬けておくだけで戻りますし、そのままだし汁に入れて使うこともできます。小さくカットされたものや粉豆腐という商品もあって、サラダに加えたり、スープやみそ汁に入れたり、とても便利に使えます。こうや豆腐は、うまみのある汁をどんどん吸ってくれるのがいいところ。味の濃いものに入れると、ほどよく調節してくれますし、茹(ゆ)でただけの野菜も含め煮にしたこうや豆腐と和(あ)えると、おいしくいただけます。
 私は21年前に阪神大震災を経験しました。その時に一番助け合えたのが、普段から「おすそ分け」している仲間たちでした。こうや豆腐って、分けやすくていいですよね。「こうや豆腐炊いたんだけど、いる?」と言い合えるような良い人間関係を築くこと。こうした普段の暮らしがとても大切で、ピンチの時にも力になるのだと思います。楽しく作って、楽しく生きて、そしてそれを若い世代にも伝えていきたいなと思っています。

家庭料理のすばらしさを見直したい

医師・作家 鎌田 實

 近年ハーバード大学から、家庭料理を食べ続けているだけで糖尿病のリスクが13%低下するという研究論文が発表されました。減塩や野菜の摂取に取り組み、こうや豆腐などの伝統食を積極的に食べるということを実践した長野県でも、実際にさまざまな病気のリスクが下がり、健康になりました。忙しいなか、毎日毎日、家庭料理を作るというのは難しいかもしれませんが、たまには子どもや孫世代に豆の煮方を教えるとか、コンビニでももっと家庭料理をメニューに加える検討をするとか、もう一度、みんなで家庭料理の力を見直す取り組みをしてみてはどうかなと考えています。特にこうや豆腐は、上質なたんぱく質に恵まれながら、安価で、本当に優秀な食品です。高齢者の寝たきりは、骨や筋肉が弱る虚弱が原因なのですけど、結局たんぱく質が不足しているからなんですね。ですから、健康づくりのためにも、家庭料理の大切さ、こうや豆腐のすばらしさを、ぜひ若い世代の人たちに伝えていきたいと思っています。

主催:こうや豆腐普及委員会(長野県凍豆腐工業協同組合)
共催:長野県 後援:読売新聞社広告局

こうや豆腐普及委員会
http://www.kouya-tofu.com/