久保力也(くぼりきや) 先生
久保先生は、阪神・淡路大震災の時まだ生後8か月で、地震の記憶がまったくない。しかし、小学校、中学校に上がると「阪神・淡路大震災を経験した最後の世代だから語り継ぎなさい」と言われ、「なんで、僕たちがしなければならないのか?」と思ったという。知らないことは語れない。
「でも今僕は、災害や防災についてみなさんにお話しすることを仕事の一つにしています。経験していない人たちが、どうやって災害について発信できるのかということをみなさんと一緒に考えていきたい。そしてみなさんが伝える側に回ってほしい。災害の経験や記憶がないのはみなさんと同じ」
防災・災害でまずできることは何かと問いかけると、「防災グッズを身の回りに置く」「ハザードマップを確認し、スムーズな避難ができるようにしておく」。何を置いてる? と質問すると「手で巻くラジオを置いてる」と元気な声。
「まずは、どんな災害が日本でいつ、どこで、どんなふうに起こるのか、知ることが大事。知っただけではなく、どうしたら守れるのか、災害によって被害は違うので対策を考えておく。次は、行動すること。これが一番大事。まずは家や学校で、地域で、みんなで災害に強い街を作っていければと思います。そして、繰り返してほしいな」と語った。
そして、「好きなこと、得意なこと、できることを増やして防災につなげてほしい。絵が描ける子は、支援物資の置き場所などを絵に描くことで幅広い人に伝えられる」と、自分の好きなことで何ができるかを参加者に問いかけた。
「語り継ぐという言葉の意味は、災害を経験した人が話したり文章で残したりしている体験をそのまま伝えるのではなく、自分の思いや考えたことを一緒に語ること。それを繰り返すことで一つひとつは小さくても、みんなが防災を考えるきっかけになる。自分は体験していないから、記憶がないからではなくて、知ったこと、学んだこと、大切だなと思ったことを、まずはみなさんが大切な人に発信することで、誰かの命を守れる」
参加者から「語った内容が生かされるなと思ったり、モチベーションになったりしたことはありますか?」と質問が上がった。「一人でも動かすことができ、助かるかもしれない。前後で比較検証することはできないが、その結果が少しでも良くなるように希望を持ってこれからも伝え続けようと思っています」と先生は答えた。
授業後、久保先生は「自分が何かやるヒントになってくれたんじゃないかと思います。家に帰って、親に『防災を考えてみない?』といったような。それは簡単なことだけどものすごく大事なこと。自分たちの一歩が、すごく大きな一歩だと思ってチャレンジしてほしい」と話してくれた。
久保力也 先生
地元・神戸の兵庫県立舞子高等学校環境防災科で防災を学び、東日本大震災の際には、募金や泥かき、がれき撤去などの被災地支援活動を行う。大学進学時、防災教育・被災地支援団体を設立。2020年、岩手県釡石市に移住し、同じ目標を持った仲間と株式会社8kurasuを設立。
8kurasuホームページ:https://peraichi.com/landing_pages/view/dthrj
音楽で防災を伝えるBloom Works先生や地球を知ることで減災を目指す巽先生、自分が見聞きしたことを語り継ぐ久保先生は、まさに好きなこと、自分にできることが防災・減災につながっています。今後起こりうる地震、巨大噴火をはじめ、いつどこで起きるかわからない自然災害にいかに備え、自分には何ができるのか「未来へ紡ぐリレープロジェクト」はこれからもみんなで考え、語り継ぎ、継承していきます。
学校の「空気や水を使った新しい製品作り」の課題で、今回参加して避難所は寒いと知り、ダウン製品に空気を入れることで暖かくなる製品を考えました。得意な英語で、災害伝言ダイヤルの仕方などを外国の人に説明して、少しでも不安な気持ちを和らげたいです。
Bloom Works先生のように、歌に乗せて防災の大切さを伝えることができることを知り、おどろきました。ぼくはピアノをひくことが好きなので、災害で傷ついた人の心を、ピアノをひくことで少しでもいやして、たくさんの人を笑顔にしたいです。
僕は絵を描くのが得意なので、火山や地震の怖さをまだ知らない人に伝えるためのポスターをつくってあげようと思います。ポスターにはわかりやすい絵と説明を入れて、それを町のけいじ板に貼って、みんなに防災をしっかりわかってもらおうと思います。
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主催/読売新聞大阪本社
特別協賛/大和リース
協賛/富士電工
後援/兵庫県、神戸市