「ダントツの性能を持つ無給油チェーンを作るため、新しい生産方法に挑戦する」。チェーン製造事業部の100周年モデル検討会議で、後藤直樹は上司の言葉に目を丸くした。
チェーンを構成する5つの部品の一つ、焼結ブシュに潤滑油を染みこませた「ラムダチェーン」は、業界初の無給油チェーンとして1988年に発売された。常に性能の向上を図ってきたが、特殊な焼結ブシュは外製だった。内製化を目指す取り組みに、不安よりも挑戦への喜びが勝った。
事業部を挙げての試行錯誤が始まった。幅広い産業分野で使われるラムダチェーンは40種類以上あり、材料を見直すたびに全数品質チェックが必要となる。そのため、検査装置の前から一歩も動けず一日が終わる日もあった。「内製化は、品質、生産効率の向上をもたらす」。思い描くゴールがモチベーションだった。自ら提案した新しい検査方法を導入するなど、苦労の末に、高品質の焼結ブシュを自社で量産できる体制が整った。潤滑油も、食品機械にも使える認証油を採用し、売り込める市場を広げた。
技術を磨き上げて壁を越える。TSUBAKIの産業用チェーンを世界トップシェアに押し上げたのは、社員一人ひとりの変革とチャレンジの精神だ。 扱うチェーンは2万種類。10年ごとにモデルチェンジを行ってきたが、「まだ性能向上に挑める」と後藤は思う。「いつか、動くもの全てを、TSUBAKIのチェーンで動かしたい」
世界を、未来を、動かせ。101年目のTSUBAKIの挑戦は、止まらない。