株式会社椿本チエイン「101年目の挑戦―世界を、未来を、動かせ。」

  • vol.1 新しいエネルギー社会へ。電力を動かす未来に挑む。
  • vol.1 V2X対応充放電装置 「eLINK」

 電気自動車(EV)の蓄電池に蓄えた電力を、電力系統(電柱)へ供給する国内初の実証実験。その現場に開発・技術センターの岡田直樹はいた。報道陣が見守る中、海外サーバーの指令を受信した「eLINK」を通じ、EVの電力が電柱に流れ込む。その間、わずか2秒。成功に安堵しながら、岡田は自らに言い聞かせた。「新しいエネルギー社会への貢献へ、これからが本番だ」

 EVをビルや工場などの電力網と双方向につなぎ、非常用電源などにも使えるようにするeLINK。東日本大震災を機に立ち上げた、椿本チエインの新事業の一つで、最大給電容量5kWは、停電時、エレベーターをも動かす力になる。

 二酸化炭素削減のほか、災害時の非常用電源にもなることからEVの普及が進み、自治体施設を中心にeLINKの納入が増えていた。だが、電力系統へ直接給電するプロジェクトへの参画は初めて。技術的な課題も多かったが、仲間に、後輩に支えられ、他部門の技術者にも相談しながら一つずつ解決。ユーザー目線に立ち、「人にやさしいインターフェース」作りにもこだわり抜いた。新型eLINKの完成と、その実証実験の成功は、情報ネットワークを通じて多くのEVが一つの発電所のように機能する「仮想発電所(VPP)」の実現へ、扉を開いた。

 「水力発電や火力発電のように、未来の子どもたちには、VPPはきっと当たり前になる」。父親でもある岡田の目は、システムがつなぐ「人」を見つめる。101年目のTSUBAKIが、電力を動かす未来に挑む。

  • vol.1 V2X対応充放電装置 「eLINK」

2019年02月18日 読売新聞夕刊 掲載

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