• 2019年11月23日に東京都港区でシンポジウムが開催されました。

基調講演痛い皮膚病、帯状疱疹を知って、治して、予防する

  • 川島 眞 氏
医師 川島 眞
医療法人社団ウェルエイジング・医療法人翠奏会・医療法人リアルエイジ静哉会 総院長、
東京女子医科大学 名誉教授、東京薬科大学 客員教授

 

帯状疱疹の症状と進行

 ほとんどの方は水ぼうそうの経験があると思いますが、このウイルスは治った後も排除できずに神経節に長く潜伏していて、何十年かたって暴れ出すと帯状疱疹を発症します。水ぼうそうと帯状疱疹は同じウイルスです。神経は脊髄を中心に左右対称に広がっていて、発症すると神経に沿って体の片側だけに帯状に痛みが先行して、数日遅れてその場所に発疹が現れます。これが帯状疱疹の特徴の一つです。治療を始めても症状は進み、2日後くらいにピークを迎えます。病院で処方される抗ウイルス薬はウイルスが新たに増えるのを止めるもので、すでに出来上がったウイルスは殺せないからです。それでも治療開始が早ければ早いほど早く治るので、すぐに専門医に相談してください。

神経痛による強い痛みも

 また、帯状疱疹は皮膚だけではなく神経の病気でもあるため、痛みも出ます。帯状疱疹の特徴は、発疹より痛みが先行することですが、厄介なことに急性期の疼痛(とうつう)は痛みがとても強く、疼痛強度では陣痛より痛いともいわれています。さらに厄介なのは、帯状疱疹が治った後も痛みだけが慢性的に残る「帯状疱疹後神経痛(PHN)」を発症する場合があることです。帯状疱疹の発症率は50代以降に急増し、現在、日本では年間で約60万人、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。そして、その後のPHNへの移行リスクも、50代以降の帯状疱疹の患者で約20%、80代では約30%と高く、PHNも高齢者に多くみられます。

免疫力を高めて予防する

 では、どうすれば帯状疱疹を予防できるのか。水ぼうそうにかかると、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する「細胞性免疫」という免疫力を持ちます。細胞性免疫は時間がたつと少し下がりますが、再び水ぼうそうや帯状疱疹の患者と接触すると上がります。そこで、細胞性免疫の強い人と弱い人とで、帯状疱疹の発症率や症状の度合い、PHNの発症リスクの違いを調べると、細胞性免疫の強い人のほうが発症しにくく、症状も軽いという結果が出ました。つまり、この細胞性免疫を常に高めておくことが非常に重要で、ある程度維持していれば、帯状疱疹を発症しにくいのです。細胞性免疫に男女差はないものの、加齢にともない男女とも下がるため、高齢者は皆発症しやすくなります。

ワクチンも対策の一つに

 また、アメリカで子どもの水痘ワクチン接種が1回の時代と2回の時代とで、その後の帯状疱疹の発症率を調べたところ、2回の時代に上昇しました。これは、子どもの水ぼうそうが減り、大人がウイルスに対する細胞性免疫を高める機会を失ったからだといえます。そのため、帯状疱疹の予防として子どもと同じワクチンが大人にも使えるようになり、日本では2016年に承認されました。帯状疱疹を未経験の50歳以上を対象に、費用自己負担で任意で接種できます。(※)ワクチン接種により発症しないわけではありませんが、発症リスクは半減し、痛みの強度も半減することが報告されています。帯状疱疹は今後、治療から予防の時代に入っていくことでしょう。その一つとしてワクチンを考えるべき時が来たと感じています。

※明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する方、及び免疫抑制をきたす治療を受けている方は接種できません。詳しくは医師に相談してください。

■profile■
かわしま まこと 1978年東京大学医学部卒業。84年パリ市パスツール研究所に留学、86年東京大学医学部皮膚科講師。88年東京女子医科大学皮膚科助教授、92年東京女子医科大学皮膚科教授。2018年4月より医療法人社団ウェルエイジング、医療法人翠奏会、医療法人リアルエイジ静哉会の総院長に就任。

経験者の体験談経験者が語る帯状疱疹

1 生島 ヒロシ  フリーアナウンサー
  • 生島 ヒロシ 氏

 昨年の2月、突然左の鼻の付け根あたりに発疹ができて、ビリビリと痛みがきたんです。普通の痛みじゃないなと思っていたら、今度はドーンとバットで殴られたような痛みがきました。これは一大事だとすぐに病院に行き、耳鼻科で患部の拡大画像を撮ってもらったところ、三叉(さんさ)神経の第一枝に沿って発疹があるのがわかり、これは帯状疱疹だろうと。そこで皮膚科を受診し、抗ウイルス薬を処方してもらいましたが、痛みもひどくペインクリニックにも行きました。

 僕は健康オタクの父を引き継いで、普段からうがい・手洗い・顔洗い・鼻うがいを徹底して、体もできるだけ冷やさないようにといろいろやっているんですが、発症当時は確かにその前後、忙しかったんですね。ですから、やっぱり免疫力が落ちていたんだろうと思います。幸い生放送の帯番組に穴を開けずに済みましたが、あの痛みはいまだに忘れられません。もう二度とかかりたくないので、以前にも増して免疫力アップに努めています。

2 雨宮 塔子 氏 フリーアナウンサー
  • 雨宮 塔子 氏

 私は大学時代、部活動で競技スキーをしていました。普段からウエイトトレーニングをしたり、夏合宿には20キロ走りこんだり、けっこうハードに体を鍛えていたんです。就職活動が気になり始めた頃、部活に勉強にと頑張りすぎたんでしょうね。ある朝起きたら、おなかの片側にピューッと赤い発疹が出ていました。痛がゆいし、なんだろうと思って病院に行ったら、帯状疱疹でした。すぐに治療したこともあり、1~2週間で治ったんですが、帯状疱疹は若くてもかかる病気だと知りました。

 テレビ局勤務時代は忙しい上に不規則な生活で、点滴でなんとかしのいで現場に駆けつけて……ということもありましたが、私の場合、睡眠不足など体がきついときにストレスなど精神的な疲れが加わると、とたんに弱るような気がしています。つい自分を追い込んでしまいがちなんですが、パリでフランス人を見ていると、みんな良い意味で“ゆるい”んですよね。無理をせず、頑張りすぎないことも大事なのかなと思っています。

■profile■
いくしま ひろし 1975年カリフォルニア州立大学ロングビーチ校ジャーナリズム科卒。76年TBS入社、アナウンサーとして活躍。89年に独立。その後、ファイナンシャルプランナー、防災士などの資格を取得。現在、TBSラジオ『生島ヒロシのおはよう定食・一直線』、BSフジ『ヒロシとDr.天野の健康サロン』等の番組や講演など多方面で活躍中。

あめみや とうこ 成城大学文芸学部卒業。1993年TBSに入社。『チューボーですよ!』等のアシスタントを務めるほか、情報番組やラジオ番組等で活躍。99年にTBSを退社し、単身パリに渡り、フランス語や西洋美術史を学ぶ。2016年7月から19年5月までTBS『NEWS23』のキャスターを務める。現在、拠点をパリに戻し、執筆活動や現地の情報などを発信している。