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 11月11日は「介護の日」。超高齢化が進む中、介護への不安や悩みを抱える家族は、ますます増加することが予想されます。
 そこで、日常生活での予防対策やADL(日常生活動作)、QOL(生活の質)の向上について、奈良学園大学保健医療学部の辻下守弘教授にお聞きしました。

――高齢者が健常から要介護状態に進むプロセスを教えてください

 要介護に至るプロセスは二つあります。一つは脳卒中や変形性関節症による痛みなどが原因で関節の動きが悪くなり、次第に家に閉じこもりがちになるケースです。もう一つは、転倒や転落が引き金となって、動くことに恐怖感を覚えたり、リハビリがうまくいかず寝たきりになるケースです。体を動かさずにいると急速に機能が低下し、認知機能や筋肉が衰えてしまいます。

――要介護になる前に、日常生活でできる介護予防策はありますか?

 家の中でできるのは、椅子に座ったままで足踏みをしたり、上半身を伸ばしてテーブルを拭く動作を繰り返す運動です。体幹をしっかり動かすことで、姿勢をまっすぐに保つ機能を維持できます。また、掃除や洗濯、料理、買い物といった家事をきちんと行うことも、日常生活動作をつかさどる筋肉が鍛えられ、介護予防になります。さらに、認知症予防にはメリハリある生活が大切です。一日のスケジュールを決め、腕時計をつけて時間を意識することで、時間の感覚が鈍らず、質の良い睡眠にもつながります。

――一緒に生活している家族は、どんなことを心がければいいですか?

 例えば、けがをしても入院の必要がない場合、「ゆっくり体を休めて」と安静を勧めるご家族は多いと思いますが、実は逆効果です。体を動かさず一日中ベッドにいると急速な機能低下を招き、寝たきりにつながります。また、ベッドに横になっている人と視線を合わさずにいると、コミュニケーション不足から脳の機能に悪影響を及ぼす可能性があります。目と目を合わせて会話したり、同じ食卓を囲むよう心がけてほしいですね。

――ADLの維持とともに、QOLも重要ですね

 家の外の世界と関わりを持ち、自分の能動的な働きかけに対して何らかの見返りがある環境づくりが大変重要です。ボランティアは理想的ですが、自分から近所の人に挨拶をする、花や野菜、ペットの世話をする、そんな小さなことでもいいのです。日々のささやかな喜びや充実感が積み重なってQOLが成り立つのです。

――「地域包括ケア」の推進で、リハビリの専門家、とりわけ作業療法士へのニーズが高まりつつあります

 近年は病院で早期リハビリによる機能回復訓練を行い、早く自宅に戻って、地域の支援を受けながらリハビリを続けるスタイルが定着しつつあります。その際、病院で理学療法士の指導によりADLの機能が回復しても、自宅に戻って個人の生活実態にそぐわないと意味がありません。そこで大事な役割を果たすのが作業療法士です。回復した機能をその人の生活にどのようにつなげていくのかが、地域包括ケアが成功する要素の一つと言われています。

――これからリハビリの専門家を目指す若者にどんなことを期待されますか?

 今後は医学の細分化・高度化が予測されますので、リハビリテーションも最先端の技術と知識が求められるようになるでしょう。身体機能の回復を主とする「理学療法士」という仕事、そして身体と心の両方から支える「作業療法士」の仕事。新しいことに挑戦し、超高齢社会を支える、介護リハビリの分野での可能性を花開かせてほしいですね。

inochi学生・未来フォーラム2018「自殺対策、テクノロジーから」

 inochi学生フォーラムは、現代の若者たちが実際のヘルスケア課題を解決しようとするアイデアコンテスト。今年は日韓の中高大学生らが約4か月間、VRやAR技術、SNSによる相談対応などICTを盛り込み、「自殺対策」というテーマに向き合った。

 10月21日の最終選考会では、22チームがプレゼンテーション。選ばれた6チームは11月25日、グランフロント大阪 北館B2Fナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターで開催される「inochi学生・未来フォーラム2018」の第1部で、約500人の聴衆を前にプランを発表する。詳しくは「inochi学生・未来フォーラム2018」ホームページhttp://www.inochi-gakusei.com/forum2018まで。

 2019年 4月開設 
奈良学園大学 保健医療学部リハビリテーション学科
~次世代型の学びを充実させて~

 多様化・高度化する現代の医療・介護ケア現場で活躍する理学療法士・作業療法士を養成するために、最先端の設備と新しいリハビリテーション理論を備えた学びを提供します。学びの5つのポイントは「チーム医療の学び」「最先端ケアの学び」「経験豊かな教員陣」「専門リハビリ領域の学び」「教育環境」。身体機能の回復を支えるプロを目指す「理学療法学専攻」では最先端のアプローチを実現する専門特化した領域の学びを充実させています。身体と心の両面から支えるプロを目指す「作業療法学専攻」では、これからの地域ケアを具現化する支援のキーマンとしての力を養成します。いずれの専攻も様々な病院・施設での現場業務の経験を通して、即戦力や実践力を習得。また、高精度の動作解析も可能な最新設備により、専門的な実習も可能になります。