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 2025年には、65歳以上の日本人の5人に1人が認知症になるといわれています。認知症と介護は今後ますます切り離せなくなり、「心のケア」の重要性も高まります。介護する側、される側が、ともに心の健康を保つ方法について、精神科医療に取り組むハートランドしぎさん(奈良県三郷町)院長の徳山明広先生に聞きました。

――認知症の介護で重要なポイントは?
 認知症の患者さんには、個性やプライドという健康な部分と、記憶力や判断力という病気に侵された部分の両方があります。プライドは残っているのに何もできない人として扱われるのは、尊厳が冒されるとてもつらいことです。その人の健康な部分と対話し、理論ではなく感情に重点を置いてコミュニケーションをとることを心がけてください。
 内容の正しさを求めるよりも、楽しさや温かさを感じてもらえるように、おおらかな気持ちで寄り添うことが大切です。個性を尊重し、意思を確認しながら、やりたいこと、できることを援助すれば、「その人らしい」生活が送れると思います。

――とはいえ、どこまでがその人本来の意思なのか、判断に迷いそうです。
 そのように悩みながら接するのは、実はとても大切なことです。「この人はこう考えている」「これはできない」と最初から決めつけると、介護する側の手間は減りますが、患者さん本人の気持ちとはズレが生じてしまう可能性があります。
 元気な時の言動を家族や周りの人から聞いたり、接した本人の反応を見たりして、迷いながら対応を決める、その時の反応を見て軌道修正することの繰り返しが、最も寄り添える介護だと思います。

――介護する側の心の負担が大きくなりそうですが、軽減する方法はありますか。
 家族、近所の人、患者の家族の会、公的機関、病院など、いろいろな相談相手を持つことです。精神分析理論の上でも、褒めてくれる人、同じ境遇の人、頼りになる人を見つけることが心の安定を保つ方法とされています。相談相手が多様であるほど、医療や介護保険制度などを上手に利用できる可能性が広がり、安心して介護ができます。
 いくら悩んでも、過去は変えられないし未来への不安は消えません。まずは「今日、何ができるのか」を考えることが大切です。本人が喜ぶことをするだけではなく、ショートステイなどを利用して、介護する側が休むのもできることの一つです。罪悪感を持つ必要はありません。上手に負担を減らして介護者が心身の健康を保つことが、いい介護につながると思います。

――医療機関の果たす役割とは。
 認知症で精神的に不安定になる方もいますし、がんや糖尿病などの合併症を持つ方は今後ますます増えるでしょう。内科治療のできる精神科医療機関の必要性が高まると思います。在宅や施設での介護が難しい場合、医療で症状を改善できるかもしれないということを知ってもらい、病院を選択肢の一つとしてうまく使ってほしいですね。