本年4月に全面施行された「女性活躍推進法」を受け、女性が働きやすい企業を認定する「えるぼし」制度が始まりました。女性が活躍する企業は業績が高いという内閣府の調査結果もあり、今後の広がりが期待されています。制度について、厚生労働省 雇用均等・児童家庭局の中山真吾さんに聞きました。
女性の社会進出が進み、雇用者に占める女性の割合は4割を超えました。管理職として活躍する女性も徐々に増えています。しかし、就業を希望しながら働けていない女性は約300万人に上っています。第1子の出産を機に出産・育児を理由に離職するなど、残念ながら女性の希望や能力が十分に生かされているとはいえない状況です。
このような中で、女性の個性や能力を十分に発揮できる社会を実現するために、本年4月に「女性活躍推進法」が全面施行されました。この法律に基づき、女性の活躍推進の状況が優良な事業主は、厚生労働大臣による「えるぼし」認定を受けることができます。「えるぼし」の「L」にはLady(女性)、Labour(働く)、Laudable(称賛に値する)などの意味が込められています。
まず、自社の現状を踏まえて、女性の活躍を進めるための「行動計画」を策定することなどが必要です。その上で、「採用」「継続就業」「労働時間」「管理職比率」「多様なキャリアコース」の五つの基準のうち、満たす基準の数に応じて一つ星から三つ星までの認定段階を設けています。五つの基準は、「女性の採用が少ない」「育児と両立できない」「管理職登用が進まない」といった女性の活躍を妨げている「壁」を打破するために必要な内容となっています。
女性の活躍推進企業であることを商品や広告、採用活動などでアピールできます。また、地方公共団体や国の府省が実施する公共調達で有利になったり、日本政策金融公庫から基準利率より低利で融資を受けたりすることができます。
10月31日現在、全国で200社が認定されています。認定企業は厚生労働省のホームページで公表していますのでぜひご覧ください。女性の活躍推進をリードする「えるぼし」認定企業の取り組みに注目してください。
池田泉州銀行は、2013年に「ダイバーシティ推進室」を設置し、女性の活躍推進やグローバル人材の育成など、全行員の「働きがいのある誇れる職場づくり」を進めています。
他の地方銀行と連携して女性行員向けのキャリアデザイン研修を開催するなど、業界をあげて女性のキャリア形成を促進する一方、両立支援や復職支援にも力を入れています。なかでもユニークなのが、女性行員の出産祝いとして贈られるオリジナル手帳。復帰までのスケジュールや保育園見学のチェックシート、両立のために夫婦で考えるページなど、先輩ママ行員のノウハウが盛り込まれています。藤田博久頭取直筆のお祝いメッセージを添えて、職場復帰への期待を伝えるとともに、復帰に向けた準備をサポートしています。
子どもの保育所送迎に営業車を利用、コアタイムなしのフレックス勤務、職場復帰をしやすくするため育児休業期間限定で派遣社員を雇用、配偶者が転勤したら同居が続けられるように転勤が可能―。これらの制度はいずれも現場で働く女性社員の声を反映したもの。社員自らが課題を見いだし、経営層に意見や解決策を提言できる環境が根付いています。代表的なのは、女性MR(医薬情報担当者)が集まって働きやすい環境づくりを考える「田辺三菱女性MR向上委員会(MT–WIC)」。2011年の設立以降、女性MRの離職率は11年度9.84%から14年度0.77%まで減少しました。
経営層と現場社員がダイバーシティ推進について意見交換を行うランチョンミーティングも定期的に開催。働き方を見直すきっかけとして役立っています。
従業員の大半を男性が占め、女性の活躍推進が遅れているといわれる自動車業界。富士通テンは10年以上にわたり、ワークライフバランス推進など、女性社員が働きやすい職場づくりに力を入れてきました。「えるぼし」のほか、2015年には子育て支援企業として「プラチナくるみん」を取得、結婚・出産した女性社員が働き続けることが当たり前の風土が根付いています。
「あらゆる人材がイキイキと働き続ける職場づくり」を目標に、ダイバーシティ推進の活動を進めた結果、女性の活躍する分野も拡大。海外営業を担当する女性部長職をはじめ、技術部門や生産部門でも管理職として女性が活躍するなど、女性管理職の登用も進んでいます。
兵庫県内を中心に107店舗を展開するみなと銀行は、2013年にダイバーシティ推進室を設置し、「キャリア形成」と「仕事と家庭の両立」に取り組んでいます。4人の女性職員による「サポートチーム」が各店を訪問し、女性職員や男性管理職らと面談を重ね、きめ細かな支援を行っています。
また、若手・中堅女性職員がライフイベントに応じた多様な働き方を学ぶ「ウィメンズ・ネクスト研修」や、女性管理職向けの「ウィメンズ・ブラッシュアップ研修」など、女性のキャリア形成のための研修も充実しています。これらの取り組みにより、女性管理職比率は過去5年間で倍増し約18%に。来年度末までに20%程度にすることを目指し、さらなる女性の活躍推進に取り組んでいます。