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 京都外国語大学学園創立70周年記念フォーラム「世界と共に生きるために必要な力とは」が9月10日、京都市右京区の同大学森田記念講堂で開かれました。第1部では、国連WFPの日本大使を務めるモデルで女優の知花くららさんと、フリーアナウンサーの八木早希さんがトークセッション。第2部のパネルディスカッションでは、世界で必要とされる力や同大学の学びについて「コミュニティエンゲージメント」の視点から意見が交わされました。

食を通して世界の子どもたちを支援

八木 国連WFPの活動について教えてください。

 戦争、災害などで食糧が足りない国に対して、食糧を通して生活を豊かにすることをお手伝いする組織です。私は2007年からオフィシャルサポーターを務め、13年には日本大使に就任しました。元々教育やチャリティー活動に興味がありましたが、国連WFPの学校給食プログラムに「一目ぼれ」したんです。食糧の足りない地域の学校で給食を配ると、働き手だった子どもたちを親が学校に通わせます。おなかいっぱい食べ、友だちがいて、勉強もできる環境で、子どもたちは未来を描く力を蓄えています。

八木 困難を乗り越えて未来を描くことを手伝うのは大人の大切な役割ですね。現地の視察にも行かれていますが、印象に残っていることは。

知花 これまでに9か国訪問しました。最初に訪れたザンビアでは、見聞きしたことを受け入れるのに必死でした。片方しかない靴を大事に履いて学校に行く子、水道がないので地面にためた雨水の上澄みをすくって料理に使う生活。日本人にとっては当然のものが全くない世界で、自分の中の物差しと違う尺度が入ってきてパニックになってしまいました。でも彼らはその中で一生懸命生きている。あれがない、これがないからダメというのではなく、彼らにとって本当に必要なものは何だろうと考え始めました。

八木 支援を「してあげている」という感覚ではないんですね。

知花 それは全くなくて、現地に行くたび、自分にできることは本当に小さいと感じます。活動に100%身をささげられない自分を後ろめたく思っていましたが、知人に「100やらなくても、10でも1でも、0よりずっといい」と言われて葛藤が消えました。この仕事、立場だからできることもあると見方が変わっています。

八木 私も国際貢献に興味はありますが、寄付や少しの支援しかできず中途半端すぎると思っていました。やらないよりはいい、まずは踏み出すことですね。

自ら発信し、コミュニティに貢献する

八木 京都外国語大学の学びのキーワードは「コミュニティエンゲージメント」。どういうものでしょうか。

ジェフ 日本の文化は、受信する側が責任を持って解読する「受信者責任型文化」。「見た?」「見た!」だけで会話が成り立つ日本語も、相手の顔色や空気を読む日本人のコミュニケーションも受信者責任型です。その反対が、相手が理解できるように言葉や態度を尽くす「発信者責任型文化」。コミュニティエンゲージメントは、相手の課題を「受信」した上で、「発信」型の自分がコミュニティに積極的に関わって一緒に解決策を探し、貢献していく活動です。

八木 伊能さんはまさにそのような取り組みをされていますね。

伊能 私たちの団体は主にベトナムで活動していて、環境と人々の暮らしを守りつつ、経済的に豊かになることを支援しています。貧困層向けの「アヒル銀行」では、アヒルのヒナを貸して、育てて売ったお金からヒナの代金を返してもらいます。もうけたお金でまたヒナを借りたり、子牛を貸す「牛銀行」を利用したり、帳簿の管理や餌の節約の工夫など、自分でビジネスをするという意識を持って貧困から脱出したい人に利用してもらいます。25羽のアヒルから始めて、3年で0・5ヘクタールの水田を購入した人もいます。

八木 意識を変える最初のお手伝いをするのが伊能さんの役割ということですね。

伊能 でも特に国際貢献という意識ではなくて、仲間と共に、村の人たちと一緒に取り組んでいくことを楽しんでいます。

言語の力が壁をなくす

八木 コミュニケーションには言語も必要です。皆さんの関わり方は。

知花 国連WFPの活動では、通訳を介すとテンポがずれるので、拙いですが英語で話すようにしています。目的をみんなで共有している場合、言語は壁ではないですね。

伊能 ベトナム語を頑張ろうと思ったのは、まずは市場のお母さんたちとのケンカに勝てるように。次第に相手の文化や考え方を知りたい、私の考えを伝えたいという思いが大きくなって上達できました。

ジェフ 人間のコミュニケーションの9割以上は非言語の部分が占めます。でも、何か目的を果たすためにはやはり言語が必要。相手の顔をしっかり見ながら、笑顔で、自分の顔から言葉が出ると意識してください。

八木 日本人としては、言語の力をある程度持つことが、のびのびと非言語コミュニケーションをとれる自信につながりそうですね。

世界で必要とされる力

八木 最後に、「世界と共に生きるために必要な力」についてお聞かせください。

知花 「共感力」。文化や環境が違う中で、相手の立場に立って物事を見るというのはシンプルだけど大事なことです。目の前にいる子どもたちが何を感じているのか、きれいごとじゃなくても全部受け止められる自分でいたいと思います。

伊能 「共に考え、形にしたり変えていく力」。紛争や独裁政権の台頭など世界の分断が進む中、若者のこれからを社会が考えなくなっています。私のような立場の大人が、若い人たちと一緒に考えて、新しく何かを作っていく中で力を発揮してもらうという取り組みを、日本でも他の国でも進める必要があります。

ジェフ 「自文化を忘れず、異文化を学ぶ力」。日本人の受信力は世界一。その力を失わずに、発信力・行動力を身につけた人材を養うのが、京都外国語大学です。皆さんもぜひ、ご近所や家族とのコミュニケーションから、受信の自分と発信の自分をしっかり作ってみてください。

プロフィル

八木 早希
  フリーアナウンサー

 1978年アメリカ・ロサンゼルスで生まれ、大阪・阿倍野で育つ。小学校4年生から3年間韓国・ソウルに住み、高校2年生の1年間アメリカ・シアトルへ留学。毎日放送で10年間アナウンサーを務めた後、フリーへ転向。

伊能 まゆ
 NPO法人「Seed to Table~ひと・しぜん・くらしつながる~」代表

 1997年明治大学卒業後、渡越。日本のNGOの事業に翻訳・通訳、調査者として参加。2003年日本国際ボランティアセンター(JVC)ベトナム事務所に赴任。09年7月に「Seed to Table~ひと・しぜん・くらしつながる~」を設立。

ジェフ・バーグランド 
京都外国語大学教授・京都国際観光大使

 米サウスダコタ州出身。1970年、米カールトン大学を卒業、来日して同志社高等学校に。大手前女子大学教授、帝塚山学院大学教授を経て、2008年京都外国語大学外国語学部教授に就任。専門は異文化コミュニケーション。