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関西から世界へ 学生と考える未来社会
2020年9月15日 読売新聞大阪本社版朝刊

SDGs(持続可能な開発目標)や大阪・関西万博について楽しく学ぶ学生向けオンラインイベント「関西SDGsユースミーティング」が8月16日に開催された。2025年日本国際博覧会協会シニアアドバイザーを務めるウスビ・サコ京都精華大学長の講演や、SDGsに力を入れる企業・団体によるトークセッションのほか、持続可能な社会を実現するためのアイデアコンテストの表彰などが行われた。

基調講演

世界を正しく理解し 未来を創造しよう

2025年日本国際博覧会協会シニアアドバイザー
京都精華大学学長 ウスビ・サコ

 「地球上の誰一人として取り残さない」ことを掲げているSDGsの大事なポイントは、世界が一つとなってゴールを目指す姿勢です。本日は次世代を担う若者が世界をどのようにとらえ、未来を創造していけばよいのかお話しします。

 SDGsの役割を理解し、世界を正しく見るには、社会のグローバル化と多様性・多文化共生の意味を知る必要があります。

 2050年までに世界の都市部の人口が約25億人増えると予想され、その増加の9割はアフリカとアジアに由来するといわれています。世界で進行する都市化と人口移動には、移民・難民やインフォーマル経済(法的な手続きを行っていない非公式な経済活動)といった問題や格差社会が懸念されます。グローバル化には世界規模での人・モノ・情報の行き来によって、知・技術・労働力などを共有できる反面、このように様々な問題があるのも事実です。

 こうした問題は一国のルールだけでは解決できません。各国がお互いの対応を見て、学び合いながら解決を図る必要があります。

 そこで重要になるのが多様性・多文化共生の実現です。異文化を知るためには自分が何者かをまず知ることです。日本を知らない若者に、世界を知るチャンスはありません。自分を知り、個として自立していることが多様な文化の受容につながるのです。私が学長を務める大学では今年度の新入生の約3割が留学生です。多様性を認め、学び合う。この教育環境が若者を真のグローバルな人間に成長させると私は期待しています。

 2025年に開催予定の大阪・関西万博は、「世界を観(み)る、世界を識(し)る」よい機会です。SDGsが目指す平等・多様・協働といった未来を創造するためにぜひ世界を正しく理解し、問題を自分事としてとらえ、課題解決のための行動を起こしてほしいと願っています。

PROFILE
ウスビ・サコ

1966年にマリで生まれる。中国・北京や南京の大学で建築学を学び、91年に来日し、京都大の大学院に進学。2001年に京都精華大人文学部の教員になり、13年に学部長、18年に学長に就任した。02年に日本国籍を取得。

トークセッション

企業の取り組み 未来社会のヒントに

 基調講演後、SDGsに力を入れる企業・団体によるトークセッションが二つのテーマで開かれた。

 まず、「豊かな海のために、私たちが今できること~もっと広い視点で海をみよう~」と題して、様々な立場から「海」に関わる事業者が意見交換。大阪・関西万博のキーワードの「いのち」の源である豊かな海を守るための取り組みを紹介した。

 くら寿司の大濱喬王(おおはま・たかお)氏は漁業創生の取り組みとして、定置網にかかった魚を年間契約で全量買い取ることで漁業者の収入の安定を図り、仕入れた魚を寿司だけでなく骨やアラを養殖魚のエサとして100%使い切ることに努めていることを紹介。さらに、魚食文化の推進を通して「“子や孫の代”まで日本の魚が食べられる未来の創造」を目指していると語った。

 海遊館の川邉(かわべ)由里子氏は「気候変動により海の生態系が大きな影響を受けている。水族館として、人々が多様な生き物を見て海の環境保全について興味を持ち、生き物や自然が持続する社会について考える機会を提供したい」と述べた。

◇ ◇ ◇

 続くテーマ「世界の未来をつくる『ものづくり』~日本の技術で持続可能なまちづくりを支える~」では、特装車・ごみ破砕機などを製造している極東開発工業の村澤(むらさわ)佐保里氏が登壇。途上国で廃棄物(ゴミ)が社会問題化していることを受けて、同社が国際協力機構(JICA)の実施する発展途上国支援事業において、スーダンにゴミ収集車を届け、廃棄物の回収を通して「きれいなまちづくり」に貢献していることを紹介。循環型社会の実現に向けてSDGsに関わる企業の役割を説明した。 

 また、未来を生きる若者に向けて「様々な課題解決に必要なのは有形無形の資産や自由な発想、新たなツールを組み合わせたイノベーション。多様性を尊重し、意欲的にチャレンジしてほしい」と熱いメッセージを送った。

持続可能な社会へ 光る着眼点 

関西の高校生以上の生徒・学生を対象として初開催された「関西SDGsユース・アイデアコンテスト」。「今、私たちにできることは何か」との視点から285のアイデアが寄せられた。有識者による審査会を経てグランプリ1作品、優秀賞2作品が選ばれたほか、1次審査を通過した作品の中から公式サイトで獲得した票数が多かった2作品にオーディエンス賞が贈られた。

★グランプリ

フードデポジット制度
細田悠太さん(エコール辻大阪卒)

 食品ロスの多い外食に着目し、完食するとデポジット分の金額がクーポンとして消費者に還元される制度の提案。 

 「食品ロスの現状やデポジット制度についての下調べを十分に行い、アイデアに説得力を持たせました。コンテストを通じてSDGsや食品ロスについてより深く学ぶことができました」

★優秀賞

天麩羅がカルタでアげる識字率
チーム 天麩羅てんぷら(大阪府立渋谷高等学校)

 日本に住む海外にルーツのある多くの子どもたちが、日本語の読み書きや生活にもハンデがあることに注目し、「カルタ」をツールとして問題の解決に取り組む提案。

 「この研究に携わった約2年間、身近な人の問題を知り、どのようにしたらその人の助けになるのかを考え、それを伝えることに取り組んできました」

★優秀賞

シーアスパラガスで塩類集積を防ぐ
シーアスパラガス班(京都府立桂高等学校)

 世界的な農業課題の一つ「塩害」を、「シーアスパラガス」を用いて、食糧・農業・環境の多方面から解決しようとする意欲的な提案。

 「まだ始めたばかりの研究で大きな成果は得られていませんが、2030年に達成するべきSDGsの17の国際目標の実現に少しでも貢献できればと思います」

★オーディエンス賞

☆グランプリNKC賞
食品廃棄物を用いた発電に向けての迅速な実験手法の開発
73期ブドウ糖班(大阪府立四條畷高等学校)

☆準グランプリ
SDGsLink
GENIE(立命館守山高等学校)

総評

審査員長 井上 剛志たけし(関西SDGsプラットフォーム運営委員長)

 最終選考に残った作品は、どれも問題や課題をよく分析し、解決策を提案していた。その解決策が実際に持続的に実施可能かという点が評価につながった。これからも身近なことからSDGs達成に向けて自分達ができることを考えながら暮らしてほしい。

本イベントの映像は、公式ホームページでご覧いただけます。
https://sdgs-idea.com/

取り組み紹介

こども食堂の運営を通じ、
誰もが安心できるコミュニティーを

 中西金属工業は、社会貢献活動の一環として、定期的に「なかに輪こども食堂」を開催。地域のお子さんや親御さんを中心に無償でカレーライスなどを提供しています。「こども食堂」の運営は社員と障がい者の就労支援を行うNPOと協働で行っており、多様な人々が安心して共生できるコミュニティーの創造に貢献しています。

中西金属工業株式会社
https://www.nkc-j.co.jp/

使い捨てをやめよう
折り畳み傘から始めるSDGs

 国内シェアNo.1傘メーカー・シューズセレクションは、日本特有の「傘の使い捨て意識」に着目し、折りたたみ傘の携帯習慣を啓発する、「たたむ、をひろげるプロジェクト」を展開。旗艦店「Waterfront SHINSAIBASHI/OSAKA」では、ビニール傘並みの値段で買える折りたたみ傘を販売するなど、様々な啓発に取り組んでいます。

Waterfront SHINSAIBASHI/OSAKA
https://www.water-front.co.jp/

主催/関西SDGsプラットフォーム、2025年日本国際博覧会協会
共催/JICA関西、読売新聞大阪本社
協賛/シューズセレクション、くら寿司、極東開発工業、中西金属工業