前回の最優秀賞受賞作品

訳「古本屋にて」

「あそこのお客さまが、あなたに本を買ってあげるとおっしゃっています」。本を読みながらコーヒーを飲むことができる古本屋で突然、店員から話しかけられました。それはどの本を買うか決めようとコーヒーを飲んでいる時でした。ちょうど図書館で読んで以来、欲しいなと思っていた本を少なくとも3冊も見つけていたので、満足していました。そんな時、私はこう言われたのです。最初、何を言われたのか理解できませんでした。

 見知らぬ人が他人のために本を買うだろうと一体誰が信じられるでしょうか。私はこのようなことは小説の中だけで起こるものと思っていました。要するに、私はパニックになっていたのです。気を取り直した時、私は買いたいと思っていた本を3冊手にしていることに気づきました。

 その人は老人で、旅の間に見知らぬ人によって何回も助けられたので、そんな自分が受けた優しさを若い世代の誰かへ返したかったんだ、と私に話してくれました。また、私が本を選んでいる間、幸せそうにしていて、それがうれしかったとも言っていました。

 その人はすぐに立ち去ったので、他の人が彼をどのように助けたのか詳しい話は聞けませんでした。しかし、その人が知っていた本の数から想像するに、その人が本の虫だったことは間違いありません。私よりも本について知っていたはずです。私の何が彼の興味を引きつけたのでしょうか?確かに、私は出会ったその本たちを楽しむに違いなく、またほかの本にも幅広く興味を持つという新しい目標ができました。ただ、私が選んだ3冊の本はすべて文庫本でした。あの人のように優れた読者であったのでしょうか。

 店を出て、少し興奮から落ち着きを取り戻した後、思いは彼の人生に向かいました。あの人の旅はどのような感じだったのか。おそらく、彼は世界中を旅行し、行った先々で本をむさぼり読んだのでしょう。その古本屋の向かいにホテルがありました。あの人がその古本屋を訪れたのも、旅の途中だったのだろうか。いずれにしても、私にとって彼との出会いは幸運なことでした。ほんの一瞬の出来事でしたが、私はこの経験を決して忘れません。申し出を受けた時の奇妙な感じをずっと覚えていると思います。

 あの古本屋で私は彼を喜ばせることができました。彼が買ってくれた本を読んでいます。そして私はこのように考えるようになってきているのです。彼の親切を若い世代に返すことが出来るような人間になりたいと。次は私の番です。いつか、目の前で若い人に特別なことをしてあげられる時が来ることを。

 一体いつ、そのような日を迎えることができるのでしょうか。