2017年3月30日 読売新聞 朝刊(大阪本社版)

社会にもっと「しあわせ」を

食卓を囲むお客さまの笑顔と
その食卓を提供する従業員みんなの笑顔のために

 家族や仲間と囲む食卓にあふれる「しあわせ」。食は、日々の健康な生活を送るためだけでなく、団らんやコミュニケーションの場を創り出します。
 株式会社1&Dホールディングス並びに事業会社である株式会社ワン・ダイニング、ダイリキ株式会社は、食を通して消費者へ「しあわせ」を提供するだけでなく、従業員のやりがいや働きやすさも追求してきました。同社髙橋淳社長とキャスターの辛坊治郎さんが語り合いました。

減りゆく団らんの時間
もう一度 みんなが集う食卓を

辛坊 子どもの頃、外食は年に1回のハレの日でした。父親のボーナスがでた翌週に、家族そろって街に1軒だけあるおすし屋さんに行くんです。子ども心に「父ちゃん偉いな」と思う一つのセレモニーであり、私の食の原体験と言える特別な思い出です。今は家でも外食でも「孤食」の時代。家族でテーブルを囲む姿は幸せの象徴だと思うのですが、その感覚が薄れてきているのが残念です。

髙橋 インターネットやスマートフォンの普及で自分の世界に入っていきがちなんですね。もう一度みんなが集まる場を作りたい、大切な人と団らんの時間を過ごしてほしいというのが我々の願いです。焼き肉やしゃぶしゃぶを食べる時、人は必ず前かがみになって参加します。そこからコミュニケーションを深めて団らんを創るというのは、前身である「髙橋商店」から受け継がれているDNAです。ワン・ダイニングでは外食という形で、ダイリキでは肉を買って家庭で食べるという形でそれを実現しています。

辛坊 外食事業では食べ放題という形がメインですが、食べ放題は自分で取りに行くのが面倒、食べ散らかしてしまうというイメージがあって、ハレの日という感覚につなげにくいのですが。

髙橋 我々の食べ放題は、安かろうまずかろうではなく、お客様に来ていただくハードルを下げるためのものです。肉のプロであるダイリキの技術を生かして、肉のカットをそれぞれの店内で行っています。テーブルオーダーバイキングというシステムでface to faceの接客を大切にし、従業員の育成にも力を入れています。これはダイリキの小売りも同じで、お客様とコミュニケーションがとれる対面販売にこだわっています。美味しい肉が並ぶ食卓を通じて、お客様の笑顔と幸せを創り出すのが我々の使命ですね。

労働環境の改善
働き甲斐と働きやすさの追求

辛坊 サービス産業は長時間労働、というイメージを持たれがちですが、現場の状況はいかがですか。

髙橋 ワン・ダイニングでは、2006年からの10年間で店舗の売り上げが増えました。単価は変えていないので、単純に客数が増えたということです。その過程で、長時間労働が発生し、従業員が疲弊して退職者が相次ぐという危機的状況を迎えたこともあります。そこで、5年前から労働時間短縮を最優先の経営課題として計画的に労働環境の改善を図るべく、1店舗あたりの正社員数を2名から3名体制にすることを目標に取り組みました。「採用・育成・定着」をテーマに社員の給与を大幅にベースアップし、4連休や3連休の取得も推進。ワークライフバランスのあり方を考え、働き方の選択肢を増やし多様化することで、働きやすさを追求しています。そうした環境を整えることで、学生さんから選んでもらえる存在になるのが企業として生き残っていくための大切なポイントだと考えています。

辛坊 仕事というのは、単に毎日ご飯を食べるお金を稼ぐためのものではなく、働いていることそのものに対する喜びがないと続きませんね。読売テレビにアナウンサーとして入社した時、私は全くの未経験で何もできませんでした。それでも毎日新しい発見があり、できなかったことができるようになっていく。一年前より自分が進歩していると実感し、一年後にはさらに進歩した自分がいるはずだという喜びや発見の連続でここまで来られたことはラッキーだと思っています。

髙橋 我々も仕事での発見や感じたことを専用の用紙に書き、店舗で貼り出して共有する「気づきメモ」というシステムを導入していますが、従業員から集まる気づきメモは毎月約1万3千枚にも上ります。日頃から業務のクオリティ向上を模索する姿勢が身につき、個人の成長につながるだけでなく、店舗、さらには会社全体を成長させる大切な財産です。私も常に目を通しますが、接客したお客様とのエピソードや、お褒めの言葉を気づきメモから知ることがよくあります。こうしたお客様の声は社員やアルバイトのモチベーションアップややりがいにつながります。アルバイトの中には、社員の生き生きと働く姿に憧れて、社員登用を希望する人もたくさんいるんですよ。

従業員の意識を高め 社会へ貢献

辛坊 人材育成の取り組みを教えて下さい。

髙橋 我々の仕事では、店舗においてお客様からの「ありがとう。また来るね」の声をいただけることが一番のやりがいです。そのために当社では、教育専門の部署を作り、従業員それぞれに合わせた階層別、レベル別の研修を充実させています。そこでの経験や達成感が従業員の成長に繋がり、またお客様の喜びにも繋がっています。「人材は人財」とよく話すのですが、今後、業態や地域を拡大し、ビジネスを新しく創り出していく源になるのは「人」です。

辛坊 2030年までに日本の労働人口の約49%が人工知能に置き換わると言われていますが、心のこもった接客は人間にしかできない仕事ですね。コンピューター時代にも対抗できる数少ないスキルのような気がします。

髙橋 だからこそ、人と人とのふれあいの重要性がさらに高まっているのかもしれません。今後も我々のビジネスモデルをとことん追求し、「着実なる成長」を続けることが目標です。正しく経営していく中で、お客様に、従業員に、幸せをどれだけ感じてもらえるかということを常に考えています。さらに、店舗数の増加と共に社会に対する関わりが大きくなった現在、社会に貢献し幸せの輪を広げるというのは企業としての務めです。従業員みんなで意識を高め、取り組んでいきたいと思います。

 

    

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